昨年、アメリカをロードトリップしたんです。大きなバンを借りて、寝泊まりできるようにして、2週間。LAからNYまで、地図を見ながら仲間と交代で運転して、1万km走りました。観光地はほとんど行かず、誰も知らない場所ばっかり。気になるところを探しては行ってみるを繰り返して、アメリカ大陸を行ったり来たりしていました。それがむちゃくちゃ楽しかった。
きっと、天邪鬼なんです。流行ってるものが苦手で、スケボーもみんながやってるときは見向きもしなくて、飽きてきたころに「最近いいよね」って。まわりは関係ない。旅先も、誰かがいいと言っているようなところにわざわざ行く必要はないと思っていて、自分の足で探しに行くほうが性に合っているというか。それはアメリカの旅でも、日本国内の旅行でも、ふだんの生活でも変わらないことです。

— 野村さんが旅に求めるものは何なのでしょうか？

発見ですね。自分が面白いと思うものを、自分の足で探しに行きたい。あとは、ワクワクするかどうか。船だったり、鉄道だったり、手段は選ばず旅をしてみたいですね。シベリア鉄道でロシアに行って、3〜4カ月帰ってこないとか。そういう旅も気になっています。
旅をしていないと、仕事もつまらなくなると思うんです。たくさんインプットすることで、役者の仕事にも活きてくるはず。俳優の仕事って、油断すると限られた人としかかかわらないし、視野が狭くなってしまう。いろいろな境遇の人と出会って、吸収したいというのはありますね。
でも、もともとオンとオフという意識はあんまりないかな。強いていうならばプライベートがオン！ 仕事のために旅をしているわけではないですけれど、人生一度きり。つまらない人間にはなりたくない。どんどん外に出て、揉まれまくって、面白いことに出会いたいですね。

— 30代になって、ライフスタイルや価値観も変わってきたのではないでしょうか。東京を出て、暮らしてみたい場所はありますか？

せっかくなら、都市よりは自然があるところがいいかな。大人になったというか、街の遊びはやりきったというか。森の中に一軒家を建てて、馬と酪農しながら、遊牧民みたいに鷹と暮らしたりとか。居心地のいいところに居つづけることが、いいことだとは思っていなくて。いまはどこからでも仕事に行けるじゃないですか。長野で暮らしたとしても、車で3時間もあれば都内に出られるし。

そうした考えに至ったきっかけのひとつが、4年前のNY留学。まったく知らない土地で暮らすことを経験して、体ひとつで飛び込んでいくことに抵抗がなくなったんだと思います。移動は電車と自転車と徒歩。自力で移動するから土地勘がすぐに身につく。だいぶ鍛えられました。だから、日本中どこでも、インドでもアフリカでも、北極でも南極でも暮らしていける、その自信はありますね。

— いろいろな土地を旅してきたなかで、好きだと感じる旅のスタイルはありますか？

車もいいんですけど、歩くのが好き。東京でも、街中を歩くのが楽しい。車だと気づかないようなことを、歩くスピードだと見つけられる。景色とか人を見ていたいし、気になる路地に入っていってみたい。迷ったって、帰れないってことはない。そういう意味では、小さな冒険はそこかしこにあるんじゃないかな。
だからこそ、バックパックひとつで必要最低限の荷物だけ持って、フットワーク軽く旅をしたい。荷物が重いと行くだけでしんどい。バックパックに収まるくらいが旅にはいいと思うんです。
日本じゃなくても、海外の旅先でもそういうスタンスです。アメリカを横断したから、次はヨーロッパでもいいし、中国でもいい。カザフスタンとか、全然知らない国も気になる。いろんな世界を見てみたいですね。ラストは宇宙かな。最後に「悔いなし！」って言えたらいいな。人生一度ですから。