©yayoi arimoto
<Spotify>オリジナル・ポッドキャストシリーズ「#聴くマガジン」の『TRANSIT VOICE 〜旅するポッドキャスト〜』。4月8日配信回のゲストは、CALICO代表の小林史恵さんです。
世界の手仕事布の95%以上がインドのものだということをご存知でしたか。
さまざまな手仕事が世界中で減少していくなかで、どうしてインドは今もなお手仕事の大国でありつづけるのだろう。そんな思いを胸に、この世界へ足を踏み入れた小林さん。
現在は、「CALICO : the ART of INDIAN VILLAGE FABRICS」を主宰して、インドの職人たちとともに美しい手仕事の布を広める活動を行っています。
インドは古くから、綿栽培にふさわしい土壌や機織りの人びと、交易拠点としての地理条件も備え、豊かな綿布の生産を誇っていました。
大航海時代がやってきて、東インド会社の設立などを経て、インド製の丈夫な布は輸出先のイギリスで人気を博します。高まるニーズにこたえるように、糸をつむぐための「飛杼」が作られ、紡績機の発明にもつながったのです。産業革命の機械化によって、多くの手仕事は奪われました。
20世紀初頭、イギリスの植民地となっていたインドで、マハトマ・ガンディーが行った独立運動。そのひとつが、自分たちの誇りを取り戻そうと、チャルカ(糸車)で糸を紡ぎ、旗で織った綿布をまとうことでした。その布が、カディ【khadi】です。
現在も変わらずに手仕事布がインド各地で活気づいているのは、そのような歴史と、国の保護という背景があるのです。
インド布にまつわる歴史や精神、そして職人たちと布・服づくりを行う小林さんの活動が、TRANSITでもお世話になっている写真家、在本彌生さんの美しい写真とともにたっぷり紹介されている『CALICOのインド手仕事布案内』(小学館)。
『CALICOのインド手仕事布案内』 小林史恵著・在本彌生写真、小学館
ポッドキャスト本編でご紹介した「ラバーリー」の織物。
インド西端にあるグジャラート州カッチ県で暮らす、牧畜を生業とするコミュニティの人びと・ラバーリーが、飼育している羊毛をつむぎ、ヴァンカルと呼ばれる織り師たちが織り、染め、またラバーリーがアップリケや刺繍を施すといった方法で織られたものです。
CALICOのラバーリートート ©yayoi arimoto
こちらはアジュラック【ajrakh】の布。
パキスタンやインド西部のカッチ地方などに伝わる、伝統的な染料などを用いたイスラム的な文様の木版捺染(ブロックプリント)の布です。
©yayoi arimoto
『CALICOのインド手仕事布案内』には、このほかにも、美しい布の数々、また、布をまとった美しいひとびとの写真がたくさん掲載されていますよ。
知れば知るほど、この世界の奥深さ、広さ、そしてまだまだ知らないことがあると気づくようになるという小林さん。
実際に布や服を手にとって見てみたいという方は、ぜひ奈良のお店「CALICO:the Bhavan」へ。奈良公園、若草山の麓に位置するこの店で、悠々と歩く鹿の姿を見ていると、遠くインドにある鹿公園へと思いを馳せてしまいます。
パンデミックが収束したら、インドの職人さんたちをぜひここに呼びたいと、小林さんは願っています。
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