東京の未来のキーパーソン
子どもの生きる力を養う中山勇魚さん
【51号 東京を時空旅行!】

News - 2021.04.23

約1400万人もの人口を誇る巨大都市・東京。
  
多くの人が暮らしているからこそ、多様な個性や暮らしのかたちがあり、それゆえの課題や衝突も生まれています。
  
今、そのような問題を解決し、誰にとっても心地よい東京を実現するため、 声を上げている人びとがいます。
 
現在発売中の『TRANSIT51号 東京 江戸から未来へ時空旅行!』では、東京の明るい未来を実現すべく、課題解決に取り組む方々に話を伺いました。
   
NPO法人・Chance For Allを立ち上げ、代表理事を務める中山勇魚さんのお話の一部を抜粋してご紹介します。学童の運営を通して、子どもたちが学ぶ力と遊ぶ力を身に付けるためのサポートをつづけている、中山さんの活動とは?
 


 
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なかやま・いさな●早稲田大学教育学部卒業。実体験から子どもの学習環境の重要性を感じ、2013年にNPO法人Chance For Allを設立。翌2014年に
学童保育「CFA Kids」を足立区梅島に開校する。現在は足立区と墨田区で9校を運営し、常時100人以上の子どもたちと向き合っている。
 
 
 
生きる力を磨く学童で
すべての子に学びの機会を
 
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7人に1人、日本における子どもの貧困を示した数字である。厚生労働省の調べによると、日本の17歳以下の子どもの貧困率は13.5%(2019年)、ひとり親世帯の貧困率は50% 近くと先進国のなかでも最悪の水準といわれている。
  
とくに足立区は子どもの貧困が3人に1人と、東京23区のなかでもかなり深刻だ。その背景には教育費の高さや親世代の貧困問題などがあり、塾や習い事などにお金をかけられる家庭の子どもとの教育格差が広がっている。
  
こうしたデータや、公営・民営問わず学童保育が存在しなかった場所であることに着目し、学童保育「CFA Kids」を運営するNPO法人Chance For All(以下CFA)は足立区に誕生した。月謝は一般的な民間の学童保育の半額以下に設定。
 
また、生活保護を受けているひとり親家庭の子どもたちを無料で受け入れる取り組みを行うなどして、どんな子どもにも平等に有意義な放課後の時間を過ごす場所を提供している。
 
「経済的貧困も深刻ですが、とくに東京では、家族で旅行に出かける、一緒にごはんを食べるといった経験や体験の機会が乏しい"相対的貧困" についても対策が必要です」
 
そう語るのは、CFA 代表の中山勇魚さん。子どもが大人を介さずに意思決定でき、失敗しても学びを得られる経験が、成長をもっとも促すものだと考えている。つまり、「遊び」こそが生きる力を養うということだ。幸福度や自己肯定感にも、遊びが大きな影響を及ぼすという。
 
 210417_transit51.jpgTRANSIT51号の誌面
  
 
「もちろん日々の宿題や勉強のサポートもしますが、我々の学童では『遊びこそ最高の学び』がキーワード。生活上の約束や、キャンプなどの行事でなにをするかなどは、子どもたち自身が話し合って決めています」
 
中山さんは、学生時代、家庭の事情で住居を転々とし、大人の都合で生活環境が安定しないことに理不尽さやストレスを抱いた。そして学童でのアルバイトを開始し、学童のあり方を変えていくことで、さまざまな"学び"の機会を奪われた子どもたちを取り巻く環境を改善できないかと考えたという。
 
「人が多すぎる東京ではどうしても激しい競争が起こる。でもその子自身の成長に焦点を当てるべきです。そして学業だけでなく、自分の力で必要なことを決定していく力をつけることが、その後の人生において大切です」
 
生い立ちによって選択肢が限定されないように、そして自力で歩む道を切り開く力を身につけられるよう、CFAは子どもたちをサポートしていく。
小学校低~中学年を中心に、1校30人前後の子どもたちが通う。
 
 
text=MISAKO TATEOKA
  


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『TRANSIT51号 東京』はこのほかにも東京の歴史・現在・未来について深く知る企画が詰まっています。
時代に想いを馳せて、多層な東京の街を散策してみませんか?

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