©Yusuke Hishida
TRANSIT54号『不思議で尊い世界の聖地へ』の「世界五大宗教と聖地」と題した企画では、ユダヤ教、キリスト教、イスラーム、ヒンドゥー教、仏教の5つの宗教を、それぞれ比較してまとめました。
ここでは、世界でもっとも古い一神教のひとつ、ユダヤ教の基本情報を駆け足で紹介していきましょう。
supervision=TESSYU SYAKU
text=TRANSIT
Q.発祥はいつ?
A.紀元前20~15世紀頃
旧約聖書『創世記』によると、神はヘブライ人アブラハムを選んでカナンの地(現在のイスラエル)を与え、彼と彼の子孫の繁栄を約束したとされる。その約束通りアブラハムは息子イサクを授かり、イサクの子ヤコブは12人の子を授かった。これがイスラエル12部族の祖となり、ヤコブはイスラエルの祖に、ヤコブの4番目の子であるヨセフはユダヤ人の祖となった。ユダヤ教はこのように、神と人が約束を交わす宗教で、「人が窮地に陥ったときに神は救世主をつかわす」というメシア待望信仰がある。
Q.信仰対象は?
A.唯一神"YHVH"
ユダヤ教において、唯一絶対の神にして万物の創造主。その名を口にするのは畏れ多いと、我が主を意味する「アドナイ」と呼ぶのが礼儀。神は「YHVH」の4文字で記され、アドナイとはこれを子音のみ発音したときの読み方とされる。
Q.信者数は?
A.約1500万人
積極的な布教は行わず、基本的に親から子へ受け継がれるかたちで存続する。そのためユダヤ教徒とユダヤ人の境は曖昧だったが、近年は両者を区別する見方もある。現在ではイスラエルをはじめ、アメリカやヨーロッパに多くの信者が暮らしている。
Q.教典・聖典は?
A.タナハ、タルムード
ユダヤ教の聖書はタナハと呼ばれ、キリスト教の旧約聖書に相当する。聖書は一つしかなく、新約聖書は含まれない。『タルムード』は口頭伝承の集大成で、みんなの先生的存在であるラビはこれを参考に聖書を講釈し、さまざまな指針を与える。
Q.教義は?
A.律法の遵守と神への忠誠
唯一絶対にして万物の創造主である神の存在を信じ、神が与えた律法を守ること、および律法に記された社会正義、他者への慈愛、倫理、道徳を神の意志としてとらえ、実践することが神への忠誠を表明すると考えられている。
Q.代表的な聖地は?
A.エルサレム
紀元前10世紀、古代イスラエルのソロモン王が首都エルサレムに神殿を建立。神がモーセに与えた律法を刻む石板を収めた「契約の櫃」をここに安置した。古代の遺構はヘロデ大王時代に修築された神殿の西側の石垣(通称「嘆きの壁」)のみ。
釈徹宗(しゃく・てっしゅう)●宗教学者、僧侶。浄土真宗本願寺派如来寺住職、相愛大学人文学部教授。著書に『ゼロからの宗教の授業』(東京書籍)、『宗教聖典を乱読する』(朝日新聞出版)など。共著に内田樹との『聖地巡礼』(東京書籍)シリーズがある。
※この記事はTRANSIT54号の一部を抜粋したものです。本誌の詳細は
こちらから。
TRANSIT54号「不思議で尊い世界の聖地へ」
聖地はどのような背景で生まれ、何を求めて人びとが集うようになったのか。信仰や宗教がもつ力やその意味に触れながら、これからの多様な生き方・価値観を考え抜いた一冊。
特集内容:イスラエル、スペイン、アイルランド、サウジアラビア、インド、アメリカ、日本の聖地、五大宗教、巡礼図解、世界聖地マップ、アニメ聖地......etc.
定価:1,800円 + tax
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