「Asian Film Joint 2022」
10/21〜29@福岡市総合図書館
〈場〉に宿るもの、とは?

映画 を通じて福岡とアジアの関わりを継続・発展させていくことを目的としたプロジェクト「Asian Film Joint」が今年も開催されます。

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突然ですが、2021年3月に幕を閉じた「アジアフォーカス・福岡国際映画祭」を知っていますか。アジアとの国際交流を打ち出す福岡市の基幹事業のひとつとして開幕したこの映画祭は、1991年から約30年もの間、福岡の街を映画で彩ってきました。

この長い年月に築き上げてきた各国映画人とのネットワークや、アジア名作映画のフィルム・アーカイブ。これらを今後も活用可能な街の文化資産として、映画を通じて福岡とアジアの間に新たな交流・協働を生み出すために始まったプロジェクトが「Asian Film Joint」なのです。

今年の「Asian Film Joint 2022」は2部構成となっており、福岡市総合図書館 映像ホール・シネラ(10月21日〜10月29日)で開催されるメインプログラム「Asian Film Joint 2022|場に宿るもの」のほか、同会場(10月15日〜10月20日)で開催される「アジア・シネマ・アンソロジー×Asian Film Joint 2022」があります。

メインプログラムの、日本やアジアの新旧作を上映する特集上映「Asian Film Joint 2022|場に宿るもの」では、7本の日本初上映、2本の九州初上映を含む、計14本の長・短編作品を上映。

「場に宿るもの」というテーマで選ばれた、たとえばタイの『スカラ座』、台湾の『アーカイブ・タイム』、日本の『ヒノサト』などでは、変化する街や社会のなかで刻々と移ろうものがある一方、時間を重ねるほど〈場〉に堆積されていく人の営みや記憶もまた存在することを提起します。

それは日本でもほかの国でも同じこと。容赦なく進行する大きな変化を前にしたとき、私たちはどんな未来を選ぶのか。未来とは突然現れ出るものではなく、過去や歴史との連続性の先に見出されるものであることを、映画を通じて観客と一緒に考えていきます。そしてそのような姿勢は、福岡がアジアと育んできた映画文化を繋ぎ・発展させるべく活動を続けるAsian Film Jointとしての決意表明でもあるのです。

ここではメインプログラムの全14作品の中から、一部を見ていきましょう。



『ヒノサト』(2002年)

製作:日本/監督:飯岡幸子
画家であった祖父が町中に残した絵を辿り、日の里の地を巡り歩く。静かに映し出される町の風景。絵。挿入される祖父の日記。アトリエに光が射し込む時、流れる三つの時間がにわかに接近する。飯岡幸子が映画美学校在籍時に、自身の故郷である福岡県宗像市日の里で製作。
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『王国(あるいはその家について)』(2018年)

製作:日本/監督:草野なつか
休職中の亜希は、幼なじみの野土香とその夫でサークルの先輩でもある直人の夫婦が構えた新居を訪れる。温度と湿度が適正に保たれたその部屋で、亜希は野土香の変化を感じ取る。
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©Natsuki Kuroda

『スカラ座』(2022年)

製作:タイ/監督:アナンタ・ティタナット
バンコクで50年以上営業を続けた老舗の映画館・スカラ座が、2020年に取り壊されるまでを記録する。閉館していく劇場の様子に、作家自身が劇場で過ごした幼少期の記憶と「映画」の一時代の終わり、そしてタイ社会の趨勢が重なる。
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©Diversion, Bandai Dam Studio, Mobile Lab

『セントーサ、地球最後の日』(2021年)

製作:シンガポール/監督: マーク・チュア、ラム・リーシュエン
1998年アジア金融危機の只中に、男とその家族は"最後の日"を過ごすためセントーサ島を訪れる。近年の開発で土地の記憶が忘失されゆく島を舞台に、不確実な時代を覆う不安と恐怖をとらえる。
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『世界認識の方法』(2021年)

製作:ベトナム/監督:グエン・チン・ティ
視覚と聴覚、私たちはどちらを頼りに世界を認識しているか。ある先住民の生活様式が失われていく様子を映しながら、"目"の文化に偏った私たちが、見えないものに"耳"を澄ますための方法を探る。
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『オン・ザ・ゼロ・ライン 赤道の上で』(2022年)

製作:イラン・シンガポール・日本/監督:神保慶政、メールダッド・ガファルザデー
言葉をなくした詩人と、子どもを流産で失った女性。交わるはずのない2人が赤道上で出会う。イランと日本で2人の監督が互いにストーリーを知らせぬまま共同制作を進めた実験的手法の作品。
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©ON THE ZERO LINE 2022

『アーカイブ・タイム』(2019年)

製作:台湾/監督:ルー・ユエンチー
新北市「国家電影中心」のフィルムアーカイブで、日々フィルムの保存や修復に勤しむ職員たちの姿を追う。フィルムに記録された遠い過去を未来へ引き継ぐ彼らの活動と理念が映される。
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©Taiwan Film and Audiovisual Institute

『空山霊雨〈デジタル修復版〉』(1979年)

製作:台湾・香港/監督:キン・フー
映画『アーカイブ・タイム』の作中で修復されていた『空山霊雨』のデジタル修復版を特別上映。仏教寺院の跡継ぎをめぐる権力闘争と秘伝の巻物の争奪戦を交えた、巨匠キン・フー監督の代表作。(提供:竹書房/Blu-ray・DVD発売中)
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©1979 Lo & Hu Co-Production Ltd. © 2018 Taiwan Film Institute. All rights reserved.

そのほかの作品も上映機会が限られたものばかり。日本、台湾、香港、韓国、タイ、ベトナム、シンガポール、イランなど、世界の空気を感じることができる映画が揃います。また、開催期間中には、主催者の三好剛平さんがさまざまなゲストとともに、「場に宿るもの」をめぐり自分たちの現在地を見つめるトークイベントなども開催予定。ぜひ会場に足を運んでみてください。



■Information
「Asian Film Joint 2022|場に宿るもの」
会期:2022年10月21日(金)-29日(土) *関連プログラムは10月15日(土)-20日(木)から
会場:福岡市総合図書館 映像ホール・シネラ(福岡市早良区百道浜3-7-1)
観覧料:1,000円(1回券)、4,500円(フリーパス券)
主催: Asian Film Joint 2022実行委員会(三声舎・LOVE FM)
協力:福岡市総合図書館、クリエイティブ福岡推進協議会

トークイベント「都市開発と映画」@六本松 蔦屋書店 アートスペース
会期:2022年10月18日(火) 18:45 開場/19:15 開演
会場:六本松 蔦屋書店 アートスペース
観覧料:無料 (着席先着25名、立見可)
事前ご予約をご希望される方は、info@asianfilmjoint.comへ以下項目を記入のうえご連絡ください。(タイトルに「10/18蔦屋イベント参加希望」とご記載のうえ、お名前・ご連絡先・人数をご記入ください)

Twitter https://twitter.com/asianfilmjoint2/
HP http://asianfilmjoint.com/
YouTube https://www.youtube.com/channel/UC5fGsrPq1KFVEPCzQ96cWOw
お問い合わせ info@asianfilmjoint.com

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