#メキシコでしたい10のこと
No.8 ルチャ・リブレが観たい!
アレナ・メヒコから地方ルチャまで

せっかくメキシコまで来たのなら、現地でしか味わえないものを存分に体感したい。というわけで、あれもこれもしたいけど、メキシコでしたいことを10、厳選しました。

ここではメキシコの国民的人気を誇る「ルチャ・リブレ」の見方を解説。ルチャ・リブレをこよなく愛するオアハカ在住の櫻井陽子さんに教えてもらいました!

text=YOKO SAKURAI



●個性溢れるメキシコのプロレス

©CMLL

「プロレス」と聞くとガチの格闘技を思い出す方もいらっしゃると思いますが、「ルチャ・リブレ」はメキシコ・プロレスでありながらこの国が誇る最高のエンターテインメントでもあります。

メキシコでは、ルチャ・リブレは日々の生活ととても近い場所にあります。選手が一般的な仕事も掛けもちしながら試合をしていることもあります。また、祭日や子どもの日には、無料でルチャ・リブレの試合が開催されることも。富裕層の子どもの誕生日会にはルチャ・リブレのプライベート試合を行うこともあるくらい。2018年にはルチャ・リブレが無形文化遺産にも指定されていて、まさにメキシコ文化の象徴でもあるのです。

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ルチャ・リブレといえばダイナミックな空中技が見逃せない。ルチャドールたちが次々と翔ぶ! ルチャ・リブレの聖地、メキシコシティにある〈アレナ・メヒコ〉は1956年に現在の場所に建設された。 ©CMLL

試合会場では華麗な空中殺法を繰り広げる2.5次元ヒーローに出会え(!)、多くのメキシコ人は腹の底から声援を送ったり悪役選手に野次を飛ばしたり、日頃のストレスを試合で楽しみながら発散しているようにもみえます。現実世界の苦労を一瞬でも忘れられる特別な空間が、多くのメキシコ人に愛されている理由かもしれません。

私はメキシコに来てからルチャ・リブレを観戦するようになったのですが、まず選手のTPOに合わせた試合運びに驚きました。「マノ・ア・マノ」と呼ばれる本気のシングルマッチやタイトルマッチがあると思えば、2~3名のタッグマッチで空中殺法が次から次へと飛び出す華麗な迫力ある試合や、会場がドッと笑ってしまうような試合もあります。 試合を盛り上げるために観客を巻き込んでいく選手もいるので、観客と選手の距離がとても近いのもファンにとっての魅力です。試合の流れを観客と一緒につくっていくムードがあるのです。

ヒーローさながらのマスクマン選手がいるかと思えば、ガチムチなお姉キャラが対戦相手の唇を力技で奪いにいったり、日本ではなかなか見れないミゼット(背の低い)選手がコミカルな試合を披露したり各チームのマスコット的存在になっていたりします。

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©CMLL

さらには選手だけでなく、試合中に公平な立場であるレフリーが、悪役や美人レスラーの肩をもって試合の流れを変える演出があることも。レフリーの臨機応変なタレント性にもびっくりです。

このように試合のバリエーションがとにかく豊富なのです。 観客の声援に答えてくれる選手も多いので、全力で応援したら選手がにっこり手を振って反応してくれるかもしれません。


●試合の見方・楽しみ方。

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©CMLL

試合形式で多いのは、2~3名のタッグマッチ。1試合で3ラウンドあって、2ラウンド制したチームが勝利(同チームが先制で2連勝した場合は3ラウンド目はなし)。選手は、テクニコ(ヒーロー役)とルード(悪役)に分かれる。先に相手チームのキャプテンを倒すか、2名を倒すと勝利になるといったルールはありますが、はじめてのルチャ・リブレ観戦であれば、「先に2ラウンド制したほうの勝ち!」ということだけ覚えておけば十分楽しめます。

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リングに倒れたアトランティス Jr.(テクニコ)に、空中から技を仕掛けるエル・テリブレ(ルード)。 ©CMLL

試合中、観客の一人がコールすると、会場全体がそれに便乗して選手の名前や応援フレーズ・野次を連発します。スペイン語が分からなくても大丈夫! 聞こえたフレーズを真似してみてくださいね。重要なのは自分も参加者の一人になって、会場との一体感を感じること。 私がよく使うフレーズは「エチャレ! エチャレ!」。がんばれ! やっちゃえ! といった意味で、選手に激励を飛ばすように叫んでいます。

選手と一緒に写真を撮りたいときや、試合中に選手のカメラ目線の写真が撮りたい場合は、「ウナ・フォト!(写真1枚!)」とだけ叫んでみてください。呼びかけに気づいた選手は、試合中でもこちらに向かってポーズを決めてくれたりします。


●メキシコシティで観る!


・〈アレナ・メヒコ(ARENA MEXICO)〉

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©CMLL


メキシコのプロレス団体・CMLL(セー・エメ・エレ・エレ)が所有する、1万8000人以上の観客を収容可能な試合会場。約6m×6mのリングを中心に、ほかの試合会場では味わえないような、コンサート顔負けの最新の音響やライティング等の演出が特徴です。最高のエンターテイメントで観客を魅了します。年に数回大きな記念試合があり、死者の日(11月1、2日)・母の日(5月10日)・父の日・(6月の第3日曜日)子どもの日(4月30日)といった祭日にもイベント試合が多くあります。〈アレナ・メヒコ〉は、CMLLが運営している試合会場でも一番の規模を誇る、ルチャ・リブレの聖地とも呼ばれる場所です。

■DATA

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©YOKO SAKURAI

試合日時:火曜19:30~、金曜20:30~、日曜17:00~
価格:曜日や試合内容により変動。たとえば金曜日はリングサイド600ペソ、1階一般席300~450ペソ、2階席150ペソなど。
住所:Dr. Lavista 189, Doctores, Cuauhtémoc, 06720 Ciudad de México, CDMX


・〈アレナ・コリセオ(ARENA COLISEO)〉

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©YOKO SAKURAI(左上)、CMLL(右下)

〈アレナ・メヒコ〉が最先端の音響・ライティング設備を備えているとしたら、こちらは昔ながらの伝統的なスタイルの試合会場。会場の規模は小さく、リングから1列目の席との間は目測で2ⅿほどしか離れていないため、選手との距離がとても近い魅力的な会場です。〈アレナ・コリセオ〉に行くならおすすめしたいのが、選手の入り待ちです! 観客と選手の入場口が同じなので、試合開始の1時間前くらいに到着すると会場入りする選手に出会えることも。選手はファンへのサービス精神が旺盛なので、気軽に写真やサインに応じてくれます。こちらの試合はストリーム配信などはしてないので、ほかの試合会場では見られないハプニングや選手たちの自由なノリでの試合運びも魅力の一つです。

■DATA

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©YOKO SAKURAI

日時:土曜19:30~
料金:イベント内容により変動。リングサイド360ペソ、1階一般席240~180ペソ、2階席60ペソ~が目安。
住所:República de Perú 77, Centro Histórico de la Cdad. de México, Centro, Cuauhtémoc, 06010 Ciudad de México, CDMX



●絶対おすすめ!メキシコシティならではのルチャ・リブレ観戦ツアー!!


©CMLL

CMLLの試合はメキシコシティの「トゥリブス(Turibus)」と呼ばれる市内周遊観光バスと提携していて、「トゥリルチャス(Turiluchas)」というルチャ・リブレを観るプランがあります。初心者の方や会場まで行きたいけどちょっと怖いという方には、ぜひ利用してほしい便利なサービスです。
バスの出発場所は、高級感漂うショッピングモール〈レフォルマ222(Reforma222)〉のおしゃれなビル前。バスにはルチャドールが同乗します!! チケットは〈レフォルマ222〉入り口近くの「トゥリブスのチケット売り場」で購入してください。バスに乗って試合会場へ向かう途中では、選手によるルチャ・リブレの説明や質問時間があって、一緒に写真撮影などもしてもらえます。試合チケット代も含まれているので、チケット購入のわずらわしさもありません。席は一般席で十分に見応えもあります。
試合が終了したら会場前でバスが待っているので、乗車して〈レフォルマ222〉で下車します。バスに選手が同乗するのは往路のみなので、選手と写真を撮りたい場合は行きの車中の会場到着前にお願いしましょう。

料金:大人1人825ペソ
※下記が含まれた価格
・バス乗車料金(〈レフォルマ222〉~試合会場往復)
・試合チケット料金(一般席)
・往路のバスにルチャドールが同乗
・お土産の応援マスク

日時:〈アレナ・メヒコ〉 火曜19:00、金曜20:00 / 〈アレナ・コリセオ〉 土曜19:00
※出発時間の30分前には集合してください。

出発場所:Reforma222 Av. P.º de la Reforma 222, Juárez, Cuauhtémoc, 06600 Ciudad de México, CDMX


●プエブラで観る!


・〈アレナ・プエブラ(ARENA PUEBLA)〉

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©YOKO SAKURAI

メキシコシティからバスで約2時間半ほどに位置する街・プエブラ。美しいタラベラ焼きの陶器が有名な観光地ですが、ここでもCMLLが主催するルチャ・リブレが観戦できます。 試合会場〈アレナ・プエブラ〉は、〈アレナ・コリセオ〉と同じく、古き良き時代のムードたっぷりの会場です。リングと1列目がとにかく近い! 目測で1.5〜2ⅿほど。
ルードとテクニコに分かれた地元の熱狂的なファンたちが毎回繰り広げる2階席からの応援合戦も見もの。爆音での熱い応援に、選手もノリノリです。会場は中央広場のソカロから5ブロックほど離れた場所にあり、徒歩10分ほどとアクセス良好。毎週月曜の14時過ぎから試合会場のチケット売り場(Taquillas)がオープンします。こちらもチケットの座席表を見せてくれるので、スペイン語ができなくても大丈夫。

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©YOKO SAKURAI

■DATA

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©YOKO SAKURAI

日時:月曜20:00~ *日曜開催になることもあるのでCMLLのSNS(とくにFacebook)、webサイトを要チェック。
料金:試合内容により変動。リングサイド420ペソ。一般席240ペソ。2階席150ペソが目安。
場所:Av. 13 Ote. 402, El Carmen, 72530 Puebla, Pue.


●オアハカや地方都市で観る!

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©YOKO SAKURAI

CMLLの選手が地方興行で試合をすることも多いです。たとえば私が住んでいるオアハカでは、月に2回ほど不定期でCMLLのスーパースター選手がメインを務める試合が行われます。メイン以外は地方選手が試合をするので、まだ知らない魅力的な選手に会えるかもしれません。
地方ルチャの魅力は何といっても選手とファンの距離が近いこと。会場内で選手がグッズの物販をしていたり、会場内で選手を見かけたら声をかけることもできます。オアハカやほかの地方開催の試合はカメラの持ち込みOKの会場も多いので、ルチャ・リブレの試合写真を趣味で撮りたい人にもおすすめです。

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©YOKO SAKURAI

試合終了後にはスーパースターと有料(200ペソ前後)で写真撮影をしたり、サインもらうこともできます。なかなか大きな会場では味わえない経験なので、ぜひ地方に足を延ばす機会があれば観戦してみてください。 会場は特設なので地元感あふれる雰囲気も旅の楽しい思い出の一つになるはず。地方の場合は、試合告知のポスターが町中に貼られています。
場所と時間をチェックしたら、試合開始前に会場でチケットを購入し、そのまま入場できます。

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©CMLL


【CMLLのチケット購入方法と注意事項】

メキシコには多くのルチャ・リブレ団体がありますが、CMLLが群を抜いて規模が大きく、2023年9月には創立90周年を向かえる歴史の長い団体です。CMLLの試合はネットのストリーム配信もあるため、開始時間ちょうどに始まり、約2時間~2時間半ほどの試合が展開されます。メキシコシティの〈アレナ・メヒコ〉〈アレナ・コリセオ〉、プエブラの〈アレナ・プエブラ〉、グアダラハラの〈アレナ・コリセオ〉で行われる試合は、CMLLの管轄です。チケット購入方法と観戦時の注意事項をここで確認しておきましょう。

◆チケット購入方法
おもな購入方法は2つ。試合会場のチケット売り場(Taquillas)で直接買うか、ウェブサイト「tiketmaster」で買うか。ウェブサイトはスペイン語か英語のみ。窓口ではスペイン語対応ですが、座席表を見ながら席を選べるのでチケットを買いやすく、はじめての方は売り場での購入をおすすめします。〈アレナ・メヒコ〉の場合、チケット売り場はの試合会場をぐるっと囲むように何カ所もあります。
チケットを購入するときは、「ウン・ボレート(チケット1枚) or 〇〇・ボレートス(チケット〇〇枚)・ポルファボール(お願いします)」と伝えるとスムーズ。人気の試合はチケット購入にも多くの人が並ぶので、1時間から1時間半前に会場に到着しておいたほうがよいでしょう。料金は開催の曜日や会場・試合内容(イベント試合は割り増し)により変動するので、現地でご確認ください。
リングサイドで観たい場合は「PRIMERA FILA(1列目)」「SEGUNDA FILA(2列目)」「TERCERA FILA(3列目)」、選手入場の花道が希望の場合は「Cerca del Pasillo(入場口近く)」を指定するとよいです。ただこのあたりは人気の席でもあるので、売り切れていることも。会場周辺のダフ屋(違法です)がいい席を持っていて、高値で売りつけようとしてくることがあるのでご注意ください。
予算に糸目をつけずに選手に近い席がよければ、間違いなくリングサイドがおすすめ。選手との距離を気にしないなら、一般席の「GENERAL」でもよいでしょう。2階席の「BALCON」はリングから遠いですが、俯瞰的に会場全体を見渡せて価格もお手頃です。リングは、テクニコ側(ヒーロー)、ルード側(ヒール)が決まっていますが、こだわりがある人以外は気にしなくて良いでしょう。

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©TRANSIT

◆注意事項
・会場に入る前には持ち物検査があります、係員の指示に従ってください。
・持ちこめない物:水や飲料、カメラ(スマホはOK)、軽食やお菓子
・試合会場が広いので、自分の座席を探すのに時間がかかります。入口に待機している青いベストを着た「アコモダドール(ACOMODADOR)」という座席案内の人にチケットを渡して案内してもらってください。試合のチラシは無料でもらえます。試合開始後の入場で、席を探してほかの観客の前をウロウロするのは迷惑なのでご注意を(ルチャ・リブレファンとしてのお願い)。アコモダドールに案内してもらったら、チップとして10ペソ~×人数分を忘れずに。
・試合会場では、ビールや飲み物、お菓子、軽食や、メキシコならではの応援グッズ売りの人が声をかけてきます。ぜひビールなど飲みながらリラックスして試合をお楽しみください。

CMLL
Web:https://linktr.ee/cmll_oficial
Twitter:https://twitter.com/CMLL_OFICIAL
Facebook:https://www.facebook.com/cmll.oficial



ルチャ・リブレの魅力をお伝えしてきましたがいかがだったでしょうか? ルチャ・リブレファンとして「ルチャ・リブレ観戦は決してハードルは高くない!」と言いたいです。 旅行者から「会場付近は治安が悪いと聞いて、観戦を諦めた」と聞いたときほど残念なことはありません。海外旅行で気をつけるべき点を守っていれば、ルチャ・リブレを安全に楽しむことができます(人気のない夜道を一人で歩かない、貴重品や携帯電話はチャック付きのバッグに入れて目が届くところで管理するなど)。

試合は夜に開催されますが、昔に比べると常設会場の周辺はかなり治安がよくなっています。ルチャ・リブレの魅力は、格闘技でありながらベースは家族で楽しめるエンターテインメントという点です。子ども連れで観戦に来ている人も多く、ルチャファンはとくにファミリー層が厚いと感じます。そう考えると平和でほのぼのしませんか?

せっかくメキシコまで来たのですから、メキシコが誇る無形文化財のルチャ・リブレをぜひ漫喫して行ってくださいね。ひと言でいえば「ルチャ・リブレは超楽しい! 最高のエンターテインメント!!」です。
※記事の情報は2023年6月時点のものです

©CMLL




■PROFILE
櫻井陽子(さくらい・ようこ)●2006年よりオアハカ在住。生産者たちと活動し、民芸品販売の「さる屋」を運営する傍ら、ガイド・コーディネーターや現地を紹介するライター活動なども。著書に『アルテサニアがかわいいメキシコ・オアハカへ』。

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