『SLOW COLLAPSE O.O.A.L』▶Interview
Anthony Thomas & Theo Constantinou
〈nanamica〉より人と自然を結ぶ写真集、発売

ユーティリティーウェアブランドの〈nanamica(ナナミカ)〉から、人と自然の関係性を捉えながら日本を撮影した写真集『SLOW COLLAPSE ONE OCEAN, ALL LANDS』が3月16日(土)に発売されました。


本作は、ニューヨークのブルックリンを拠点に活動する映像監督兼写真家のアンソニー・トーマス(Anthony Thomas)と、ストリートカルチャーに根差した作品を発行するパブリッシャー「PARADIGM」のオーナーでありコペンハーゲンを中心に活躍する写真家のテオフィロス・コンスタンティノウ(Theophilos Constantinou)の2人が、nanamicaと共同制作をした写真集です。

2017年に、ニューヨークの〈Dover Street Market〉で出会ったアンソニーとテオ。すぐに印刷物に対する芸術的な感性に意気投合して、写真集『LAMB』(2018)を一緒に制作し、その後も写真集や音楽制作で幾度も協業するようになりました。

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アンソニー・トーマス(Anthony Thomas)。1990年生まれ。ニューヨークのブルックリンを拠点とするジャマイカ系アメリカ人の映画監督であり写真家。クリエイティブスタジオ「MODAL PLAYWORKS」の創設者でもある。 ©︎nanamica

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テオフィロス・コンスタンティノウ(Theophilos Constantinou)。1986年生まれ。デンマークのコペンハーゲン在住の写真家、出版者、環境保護活動家。写真をとおして、都市環境の衰退と自然との関係、異国の地理的気候や文化、精神世界を記録する。自身のブランド「PARADIGM」で、〈BEAMS JAPAN〉やNYやLAの〈Dover Street Market〉 でカプセルコレクションも展開。 ©︎nanamica

そんなアンソニーとテオがかねてから2018年から取り組んでいたのが、「SLOW COLLAPSE」というプロジェクト。未来の環境や気候変動への深刻な懸念、人と自然の関係性、信仰、スピリチュアリティ、文明についてともに考えて、写真や詩で記録していくこととなります。

世界を見渡すなかで2人が関心を抱いていたのが、日本の歴史。とくに産業化の時代に興味をもって、何度も訪れては記録をしていたといいます。そして日本を旅するごとに2人が心惹かれていったのが、日本の四季や自然、水の美しさだったといいます。

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アンソニーとテオが「SLOW COLLAPSE」プロジェクトを多くの人に知って考えてもらう方法を模索するなかで出会ったのが、「ONE OCEAN, ALL LANDS」(海は一つで世界はつながっている)をスローガンに、世界を一つとして捉えた世界観をベースにピースフルな生き方をサポートしている nanamica でした。

2人が東京、富士山やその樹海、本栖湖、直島などを旅して自然と人間の精神性の表現を記録してきた軌跡と、"七つの海の家"という名のもとに、国境や思想にとらわれないリアルな感覚を追求するnanamicaが潮汐のように引き寄せられて、写真集『SLOW COLLAPSE ONE OCEAN, ALL LANDS』の制作へと結びつきます。

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写真集のタイトルにもある"SLOW COLLAPSE"は、ゆっくりとした必然的な "崩壊 "を意味しています。光の反転を用いた富士山、ノイズがかったノスタルジックな湖、日本であることを忘れてしまうユニークな構図やポラロイドを複写した写真など、被写体との間に潜む詩的な空気は、恐ろしいほど生々しく、繊細なリズムを生み出しています。

アンソニーとテオに、写真集の制作についてインタビューをしました。

―――2人の制作はどのようにおこなわれたのでしょうか?

アンソニー&テオ:私たちのワークフローは、音楽をつくることに近いものだった。2人のアーティストが楽器を持って、反応し、感覚に反応し、直感に従う。このプロセスの素晴らしさは、同じ空間を共有しながら、2つのまったくユニークな創造的物語を記録できることでした。ロジスティックスには細心の注意を払いましたが、有機的な共同作業の脈動が花開くように、エネルギーに導かれながら制作しました。

「SLOW COLLAPSE」プロジェクトの基盤は、肉体の欠陥と歴史的な美学、そして地球の未来の気候に対して人間が刻んだ影響の残忍性にありました。このような強い理念と焦点をもつ私たちは、プロジェクトが私たちをどこに連れていくのかに耳を傾けながらつくりました。

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アンソニー&テオ:これまで私たちは何度も一緒に仕事をしてきたのですが、このプロジェクトに取り組むうえで、互いの仕事ぶり、長所、短所、弱点を改めて感じながら、修行僧のように共同作業をしてきました。

アイデアが激しすぎると感じたとき、自分が不相応だと感じたとき、あるいは深入りしすぎて結果が見えないとき、その経験が何を生み出すのか真実が見えないとき、2人はスパーリングパートナーのようになりました。

そして5年間の歳月をかけながら、最終的に価値のあるものをつくり上げることができました。私たちのモチベーションがこのプロジェクトの糧となったと感じています。

―――世界の気候変動や環境の変化に関するプロジェクト「 SLOW COLLAPSE」をつづけるなかで、結果的に日本に集約されていったのはなぜでしょうか。

アンソニー&テオ:日本の自然には、はっきりとした四季があります。さらに、森、山、海といった恵み多き自然と、火山、地震、津波といった自然災害もあって自然と密接に対峙している場所だと感じます。

―――写真集の中にはカメラも写り込んだカットがありましたが、どのような機材を使っていたのですか?

アンソニー&テオ:マミヤRZ67プロII、リコーGR1、ヤシカT4、ニコンF3、ポラロイドSX-70ランドカメラ、オリンパスMju II Zoomなどを使っていました。

―――写真を撮るときに心がけていたことは?

アンソニー&テオ:光と自分の直感に従って撮るようにしています。心に留めておくことは何もなく、むしろ感覚に導かれる。これは何千時間もの試行錯誤から生まれたもので、ときには偶然性に恵まれることもあります。

―――写真集やプロジェクト名のタイトルを "SLOW COLLAPSE "としたのはなぜですか?

アンソニー&テオ:このタイトルは、自然界と社会における世界情勢の現状について瞑想しているときに思いつきました。侵食のように、それは長い長い時間をかけて起こります。崩壊はすぐに訪れることもあるけれど、今日の世界では徐々に起こっているように感じられるし、メディアは常に世界や社会に関するネガティブなテーマを宣伝しています。ゆっくりとした必然的な "崩壊 "は、いつも私たちの目の前にありながら、実際には決してそこにないと感じています。

―――写真集にはお母さんからやミュージシャンのサロモン・フェイ(Salomon Faye)からの手紙、反転した世界(反転したイメージ、俯瞰した富士山、反転した色彩、上下など)が写り込んでいますね。どのような考えで写真集を構成したのでしょうか?

アンソニー&テオ:フルアルバムではなく、ヒップホップのミックステープのような作品にしたかったのです。サンプル、フィーチャー、反転、未完成の思考。『SLOW COLLAPSE』の作品群は広大で、どんな壮大なアートワークもそうであるように、本当の意味で完成することはないと思っています。

人間と自然の関係性を、詩的に、音楽のような描写で構成された一冊。どこから読みはじめても楽しめて、人と自然と精神性の旅に誘ってくれます。

この写真集の発売を記念して、写真集に収められていたカットから、CDの盤面や蜘蛛をプリントしたTシャツもリリースされています。販売はnanamicaの直営店とオンラインストアより。

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INFORMATION
写真集『SLOW COLLAPSE ONE OCEAN, ALL LANDS』¥4,400 (税込み)

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Tシャツ、¥8,800(税込み) ©︎nanamica

取扱店舗|nanamica DAIKANYAMA/nanamica D.W.S./nanamica MOUNTAIN/nanamica KOBE/nanamica FUKUOKA/nanamica NEW YORK/nanamica ONLINE STORE
HP|https://www.nanamica.com/
IG|https://www.instagram.com/nanamica_onlinestore/?img_index=1

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