1943年6月3日、ロサンゼルスのダウンタウンで「ズート・スーツ暴動」と呼ばれる事件が勃発しました。
白人が多数を占める軍人と、ロサンゼルスに住むメキシコ系アメリカ人(チカーノ)の若者の間で起こった衝突。その背景には、移民に対する人種差別的な社会風潮がありました。
当時の主要メディアの偏向報道の結果、チカーノ、とくにズートスーツを着た若者たちは犯罪を犯しやすいと信じる市民が増え始めたのです。
ウディ・ハーマンの演奏中に「ズートスーツ」を着る若者を検査する兵士 ©︎Public Domain
「ズート・スーツ」とは、丈の長いジャケットと、極端にだぶだぶしたシルエットが特徴のスタイル。
1940年代初頭、ロサンゼルスには多くの労働者階級の若いチカーノたちが暮らしていました。
「アメリカ社会への反抗」と、「メキシコの価値観を保持する親世代への対立感情」。複雑な葛藤を抱えた彼らは、アイデンティティの確立に悩みながらも、ファッションを通して自由と反抗心を表現したといわれています。
©︎Aaron F
Bar in LA - between downtown and nowhere ©︎David Ludwig
ロサンゼルスのダウンタウンでは、いまでも多くのメキシコ系アメリカ人が生活しています。
なかでもユニオンステーションから歩いて5分ほどの場所にあるオルベラストリートはロサンゼルス発祥の地として知られ、歴史地区として保存されています。
路地に入り込めば、もうそこはメキシコ。
屋台とレストランが両脇に連なり、スペイン語が飛び交うなかで、伝統料理や民俗工芸品などを楽しむことができるおすすめエリアです。
少し疲れたら、オルベラストリートの最終地点、パセオ・デ・ラ・プラザでひとやすみ。地元民と観光客が入り混じる広場で、チカーノの歴史といまを感じてみてはいかがでしょ
う。
©︎www.tomgamache.com
©︎Lucas McDaniel