#What'sロッキー山脈?
イエローストーン、バンフ、ジャスパー......
北米大陸を貫く大山脈の世界

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アメリカ・ニューメキシコからカナダ・ブリティッシュコロンビアまで、北米大陸を4800㎞以上にわたり貫くロッキー山脈。
自然と共生してきた人びとの価値観が息づく大山脈の世界をご紹介。

illustration=TAKASHI TAIMA
text=MIKITO MORIKAWA





【基本情報】

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エリア:アメリカ、カナダ
長さ:南北約4800㎞、幅400〜550㎞
構造:約7000万年前、世界的規模の造山運動が起きたときにできた。ロッキー山脈に降った雨は川となり太平洋、大西洋、北極海へ注ぐため、北米大陸の尾根といわれる。


【歴史】

約1万年前にロッキー山脈周辺に居住を始めた北米先住民は、マンモスやバイソンを狩っていた。16世紀にスペイン人の入植が始まり、先住民の数は西洋とのにより激減。18世紀には主に英国人が毛皮や鉱物を求めて入植した。
19世紀中頃にゴールドラッシュが始まると、交通需要が高まり、大陸横断鉄道が造られる。同時期、英国人女性のイザベラ・バードは旅行記『ロッキー山脈踏破行』で、自然と人の関係性を描いた。 20220621_ROCKIES_2.jpg


【国立公園】

9世紀後半、ゴールドラッシュにより土地の開発が進む一方、ロッキーの自然を保護する運動が始まる。米国では、1872年にイエローストーンが世界初の国立公園に指定された。
カナダでも、1887年設立のバンフやジャスパーなどが国立公園に。園内の自然を守るレンジャーの制度や文化も、長い時間をかけ育まれてきた。

●ロッキーマウンテン
約600㎞におよぶトレイルは多彩な自然を通り抜け、4000m級の山々やビッグホーンシープなどの野生動物を見られる。 20220621_ROCKIES_3_©Christian Collins.jpg
©Christian Collins

●イエローストーン
世界初の国立公園で、年間で約400万人が間欠泉などの観光名所を訪れる。グリズリーやアメリカバイソンが生息。 20220621_ROCKIES_4_©Rennett Stowe.jpg
©Rennett Stowe

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©Pedro Szekely

●バンフ
1887年にカナダ初の国立公園となり、世界自然遺産にも登録されている。3000m級の山並みや、氷河、湖、滝が見所。 20220621_ROCKIES_5_©Jorn van Maanen.jpg
©Jorn van Maanen


【街】

●ボールダー
ロッキーマウンテン国立公園に近く、コロラドロッキーへの拠点となる。高地トレーニングやロハス発祥の地としても有名。 20220621_ROCKIES_6_©Pedro Szekely.jpg
©Pedro Szekely

●シャイアン
ワイオミング州都で、19世紀の鉄道開通で発展し、西部開拓の雰囲気が残る。バードも同地を皮切りにロッキーを巡った。 20220621_ROCKIES_7_©Domenico Convertini.jpg
©Domenico Convertini

●ジャスパー
ジャスパー国立公園内にあり、リゾート生活を楽しみつつ、勇壮な山や湖、エルクといった野生動物など大自然を満喫できる。 20220621_ROCKIES_8_©Nomadic Lana.jpg
©Nomadic Lana


【動物】

高低差と緯度の違いで多様性に富んだ自然が広がり、各地に適応した野生動物が存在。食物連鎖の頂点に君臨するグリズリーはカナダを中心に生息する。マウンテンゴートなどの草食動物は、高地に適応して独特な生態系を築いた。
また、オオカミなど乱獲で絶滅寸前に追い込まれた後、保護活動で生息数を回復した種も。 20220621_ROCKIES_9_©marneejill.jpg
©marneejill


【植物】

標高の差と、山脈の東側か西側かにより、異なる植生が見られる。乾燥した東側はサバンナが広がり、湿った西側は針葉樹が生い茂る。カナダでは、モス・キャンピオンなど高山に咲く多彩な花も見所。
標高1000〜1900mの山地帯だと6月頃が、標高がより高い亜高山帯では7月、8月がピークで、登山客の目を楽しませる。 20220621_ROCKIES_10_©ActiveSteve.jpg
©ActiveSteve


【スキーリゾート】

コロラド州は米国においてウィンタースポーツがもっとも盛んな地域。とくに州都デンバーから車で2時間の距離にあるベイルは、195本のコースを擁するなど全米最大規模を誇る。
カナダでは、バンフに行けば、世界自然遺産内でスキーが楽しめる。またナキスカ・スキー・リゾートは、1988年のカルガリー冬季五輪でスキー競技が行われた。 20220621_ROCKIES_11_©Zach Dischner.jpg
©Zach Dischner


【地形】

約7000万年前の地球規模の造山運動によって生まれた山、その後の隆起でできた山など、複数の時代に形成された山が折り重なる。
また地球の気候変動の周期によって繰り返し氷河に覆われたことで山が刻まれ、切り立った山々、氷河に削り出された谷や湖、広大な砂漠など、緯度とともに変化するダイナミックな自然景観が展開している。 20220621_ROCKIES_12_©GlacierNPS.jpg
©GlacierNPS


【北米先住民】

1万年前頃から、ロッキー山脈の周辺には北米先住民が住み、各部族に分化。近代になるとヨーロッパ人による迫害で人口が激減した。
今ではいくつかの居留地が設けられ、たとえば東部ショショーニ族と北部アラパホ族が暮らす居留地では、伝統的な祭りパウワウが開催され、民族衣装で着飾った先住民の踊りが披露される。 20220621_ROCKIES_13_.jpg


【トレイル】

ロッキー山脈の手つかずの自然道を、最小限の装備でテント泊を繰り返して歩き通すロングトレイル・トレッキング。そのカルチャーは、米国人がフロンティアを開拓するなかで培った精神を継承する。
コンチネンタル・ディバイド・トレイルは、ニューメキシコ州からモンタナ州まで約5000㎞を結び、山や砂漠があり難易度が高い。 20220621_ROCKIES_15_©Bob Wick, BLM California.jpg
©Bob Wick, BLM California




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