#What's アンデス山脈?
南米の遥かなる天空世界
標高5000mの人の営みに迫る

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全長約7500㎞、地球上で最長のアンデス山脈。標高5000mにも人の営みがあるほど、山と人が近い。
南米の遥かなる天空世界を覗いてみよう。
illustration=TAKASHI TAIMA
supervision=KAZUHARU MIZUNO text=TRANSIT




【基本情報】

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エリア:ベネズエラ、コロンビア、エクアドル、ペルー、ボリビア、チリ、アルゼンチン
長さ:南北7500㎞、幅350〜750㎞
構造:太平洋の下にあるナスカプレートが南米大陸にぶつかり、南米大陸に沈み込むことで形成されたと考えられる。山脈上には活発な火山があって地震も多い。


【歴史】

ケチュアやアイマラといったインディヘナの民の文化が昔から息づいていたアンデス山間部。紀元前1000年頃からチャビン文化が成立。その後、アンデス文明が起こり、12〜16世紀にインカ帝国が勢力を拡大。1532年のスペイン人の侵入で植民地時代へ。18世紀初頭には、スペインの支配から諸国が独立。ベネズエラ、コロンビア、エクアドル、ペルー、ボリビア、チリ、アルゼンチンの国境線が固まっていった。 20220629_T56_2©Emerson Silva.jpg
©Emerson Silva


【山】

●アコンカグア
標高6960m。南米最高峰でアルゼンチンとチリ国境付近に位置する。登頂成功率は3割ほどとされる。 20220629_T56_3©Miguel.jpg
©Miguel

●フィッツ・ロイ
標高3405m。アルゼンチンのパタゴニアにある。先住民が「チャルテン(煙を吐く山)」と呼ぶように雲が多い。 20220629_T56_4©Matthew Flynn.jpg
©Matthew Flynn

●ビニクンカ
標高5200m。ペルーのクスコ近郊にあり、地層が織りなす景色が見事なことから、レインボーマウンテンという呼び名もある。 20220629_T56_5©alex Newmyer.jpg
©alex Newmyer


【街】

●クスコ(ペルー)
ペルー南東にある、標高3400m、人口約43万人の都市。インカ帝国の首都で、ケチュア語で「へそ」を意味する。 20220629_T56_6©Evie V.jpg
©Evie V

●マチュピチュ(ペルー)
クスコから北西に約70㎞、標高2430mにあるインカ帝国の遺跡。1911年にアメリカの考古学者に"発見"された。 20220629_T56_7©Pedro Szekely.jpg
©Pedro Szekely

●ラ・パス(ボリビア)
標高3593m。ボリビア中西部にある世界でもっとも標高の高い事実上の首都。すり鉢状の地形になった急勾配の街。 20220629_T56_8©Julie Laurent.jpg
©Julie Laurent


【産業】

金、銀、銅、鉛、錫、石油、天然ガスなど、資源が豊富なアンデス山脈。スペイン帝国の繁栄を支えたボリビアのポトシ銀山や、恒久的居住地としては世界でもっとも高所の標高5100mにあるペルーの金鉱山の町、ラ・リンコナダが有名。アンデス諸国の財政を支える一方で、鉱山開発が環境汚染につながっているケースも。 20220629_T56_9©Puriy.jpg
©Puriy


【祭り】

アンデスの先住民には太陽や動物に神を見出す信仰があり、農業に紐づいたお祭りが多い。クスコの「インティライミ(ケチュア語で、太陽の祭りの意)」もまさに収穫の感謝や豊作祈願にちなんだ祭り。6月24日の冬至の日に、インカ帝国時代の民族衣装を身に纏って歌って踊り、リャマの心臓を捧げる儀式が行われる。


【交通】

標高4000m以上の高地を旅する場合は、道路が整備されていない場所も多いため、ロバやラバ(写真。ラテン語では「ミュール」と呼ばれる。雄のロバと雌のウマの交雑種)が運搬や移動手段に利用されている。ラバは、ウマよりも足が短くて蹄が硬いため、悪路に強く、ロバよりも体が大きくて丈夫なので山間部で重宝されている。 20220629_T56_10©Gailhampshire.jpg
©Gailhampshire


【動物】

アンデスでよく目にするのがラクダ科の動物たち。家畜としては、運搬や食用に使われるリャマ、体毛を利用するアルパカがいる。野生種にグアナコ、ビクーニャがいる。先住民に「天の神」として神聖視されるアンデスコンドルもこの地域特有の生き物。翼を広げると3mにもなる。 20220629_T56_11©loriejeanne.jpg
©loriejeanne


【住宅】

標高の高い山間部では樹木が育ちにくく木材の調達が難しいため、粘土と藁を混ぜて乾かした日干しレンガ(ペルーでは「アドベ」と呼ぶ)を用いた家が多い。木造よりも断熱性が高く、使わなくなっても土に還るので、エコロジーな素材でもある。漆喰を塗って防水性を高めたり、鉄筋を入れて耐震性を高めることもある。


【地形】

アンデス山脈中部(ペルー、ボリビア付近)は、東山系(アマゾン側)と西山系(太平洋側)で山列が2つに分かれ、その間にはティティカカ湖がある。アンデス山脈は南米の重要な水源。アマゾン川の源流の一部もアンデス山脈にある。標高が高い地帯に人が暮らしているのは、川から真水を手に入れて農業しやすいという理由もある。


【植物】

標高3000m以上のアンデスの山では、乾燥していて樹木は育ちにくい。そんな荒野でも見かけるのが、サボテンや高山植物。乾燥、寒さなどに強く、多肉植物のような見た目のロゼットビオラや、100年に一度花が咲く、12mもの大きさもあるパイナップル科のプヤ・ライモンディはアンデス特有の植物。 20220629_T56_12.jpg


【農業】

インカ帝国時代の農業実験場とされるモライ遺跡も残るなど、古くから農業が盛ん。ジャガイモはアンデス原産、トウモロコシは中南米原産で、標高3000m以下ではトウモロコシ、4000m以下ではイモ類がよく作られている。それ以上、標高が上がると栽培が難しく、4000〜5000mはリャマやアルパカの放牧地になっている。 20220629_T56_13©Bill Damon.jpg
©Bill Damon




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