ニュージーランドのメリノウール使用
〈ANNUAL〉が生み出す
上質なニットウェアとは

Story - 2022.09.30
前篇・後編と2回にわたってお送りしてきたニュージーランドへの旅。
美しい自然環境やそれらを存分に味わえるアクティビティの数々、そしてエコ&サスティナブルが根付くライフスタイル......と多彩なニュージーランドの魅力をお伝えしてきた。

そんなニュージーランドで取れるメリノウールに着目し、その品質のよさを伝えたい、という思いでニットを制作しているブランドがある。それが、2019年にスタートしたニットウェアブランド〈ANNUAL(アニュアル)〉だ。

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〈ANNUAL〉はニュージーランド産のメリノウールを使用した透明性の高い物づくりにこだわり、羊毛の買付けから糸づくり、デザイン、編立まで全ての工程をチェックし、どの牧場からやってきたのか、どの工場で生産されているかを細かく確認。持続可能なプロダクトを生み出しつづけている。

そもそも〈ANNUAL〉がスタートしたのは、ニュージーランド産のメリノウールに出会ったときに衝撃を受けたことがきっかけだったという。今回は、そんな〈ANNUAL〉誕生秘話やプロダクトへのこだわりを、デザイナーの関川さんに伺った。

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「もともと、僕たちの会社は、アパレルブランドに向けてさまざまな製品や素材を提案することが主な事業。なので、常日頃から多様な種類の生地や糸を開発しているんです。このように、さまざまな素材を探究しているなかで出合ったのが、ニュージーランド産のメリノウールでした。」

ニュージーランド産のメリノウールの特徴は、繊維が細く柔らかいこと。繊維が太い糸だと、着た時ときに肌に刺さりチクチク感の原因になる。だが、繊維が細いニットは肌に当たっても刺さらず、しなやかに曲がるのだ。

「だから、ニュージーランド産のメリノウールを使ったニットは着心地がとてもいいんです。〈ANNUAL〉で使用しているメリノウールは、なんとカシミヤと近い細さをもっているんですよ」

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とはいえ、メリノウールは世界中で生産されている品種。ニュージーランド産のシェアは世界でたった1.3%ほどと、生産量はそう多くない。にもかかわらず品質は最上級なのだというが、なぜニュージーランドのメリノウールはそんなに良質なのだろうか?

「ニュージーランドは、基本的には気候の変化が大きすぎず過ごしやすい国ですが、山に囲まれた地域などでは夏は30度、冬は−20度とかなり寒暖差の激しい場所もあります。そういった過酷な環境から身を守るために、羊の毛の形状もどんどん進化していったといわれています」
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ニュージーランド産のメリノウールは毛の「うねり」が大きいのが特徴。うねりが大きいと空気の層ができ、外気から身を守ってくれるのだ。だから〈ANNUAL〉のニットは、軽いのにとてもあたたか。メリノウールは、羊の生育環境に品質が大きく左右されるため、過酷な環境で育った羊のほうがよい糸になりやすいといいます。

「だからこそ、数も少ないし値段も高い。でも、僕たちはお客さんによい素材・よいウールを届けたかったので、ニュージーランド産のものを使用することに決めたんです」

また、ニュージーランド産のよさは、高品質なことだけではないと、関川さんは話す。

「羊たちの多くは、毎年大量の毛を刈り取りたいという人間の都合で品種改良されています。でも、僕たちは人間の利益を優先するのではなく、羊たちのことを考えて、彼らがのびのびと暮らせるような環境をつくることが大切だと思っているんです。サスティナブルやエコに対する意識が高いニュージーランドは、いち早く羊と人間の共存について考え、取り組みを進めている。これも、ニュージーランド産のウールに決めた理由のひとつです」

0913_3.jpeg このように〈ANNUAL〉では、高い品質の製品をつくるために多くの点に配慮しているという関川さん。だが、〈ANNUAL〉の魅力はそれだけではない。どのアイテムをみても、流行に左右されないベーシックさのなかに、ほんの少しひねりを効かせ、遊び心のあるデザインが光っているのだ。

「私たち〈ANNUAL〉は、シーズンごとに商品を新しく作るのではなく、売れて減った分を補充するようなかたちでゆっくりと新しい商品を作っているんです。だからこそ、どんな時代にも、どんなアイテムにも合わせやすいデザインにしています。ただ、そのなかでもちょっと小技を効かせるようにしている。だから、デザイン性の高いものを探している方にも気に入ってもらえると思います」
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たとえば、この白いニットベスト。同じ糸を使っているが、編み方を変えることでアーガイルの模様が浮き出るように設計されているのだという。「違う色の糸を使って柄を編むこともできるのですが、この白の色を活かしたかったんです。普通、ウールの白はもっと黄みがかっているのですが、ニュージーランド産のウールは純白に近いまっさらな白。これは、ニュージーランドの寒暖差から身を守るために毛がぎゅっと詰まっていて、不純物や紫外線が入りにくいからだといわれています」

vest.png Argyle vest ¥19,800

そんな〈ANNUAL〉のニットを、先日TRANSIT編集部がニュージーランドに渡航した際に持っていき、道中のさまざまなシーンで着用させてもらった。渡航した6月、季節が日本と真逆のニュージーランドではまさに冬の始まる時期。 とくに緯度の低い南島は、夜になるとかなり冷え込んでくる。

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そんな南島の街・クイーンズタウンでは、黄色のニットをチョイス。着用した編集部メンバーは肌があまり強くないので、ニットを着るとすぐ肌がかゆくなってしまうこともしばしば。だが、〈ANNUAL〉のニットは表面がふんわりなめらか。かゆみを感じることなく、1日を過ごすことができた。あたたかいのに分厚すぎないので、コートを着ても着膨れしないのもうれしい。
ニュージーランド人のガイドの方にその話をすると、「実はわたしもいまニュージーランド産のメリノウールを着ているんだけど、本当に肌触りがいいよね!」と嬉しそうに教えてくれた。

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Line pullover ¥28,600

北島の大都市・オークランドでは、白いニットベストを着用。南島よりも温暖なオークランドですが、1枚だけだとやはり少し肌寒い気温です。そんなときは、ニットベストがちょうどいい。さりげないアーガイル柄でコーディネートのアクセントになるのに、白なので合わせる色を選ばない。ショッピングやディナーなど、ちょっときれいめに出かけたいときにもぴったり。

IMG_7466.jpg vest.png Argyle vest ¥19,800

ブルーのニットを着て向かったのは、オークランドからフェリーで40分ほどのワイヘキ島。オーバーサイズなので動きやすく、どんなボトムスとも相性抜群だ。少しくすんだブルーのカラーリングも絶妙。後ろの裾が少し長くなっているので、体型をさりげなくカバーしてくれるのも◎。

blue:aukland.jpg blue.png Henry Thermal Pullover ¥22,550


実際に着用してみて、その高いクオリティやデザイン性を実感した編集部メンバー。だが、〈ANNUAL〉のニットは、着て終わり、だけではないのもポイント。〈ANNUAL〉では着なくなったニットを回収し、新たな糸へと再利用する「CLOTHLOOP」という取り組みを導入。回収された服は選別され、再資源化が可能なものはふたたび糸になって紡がれ、新しい服へと生まれ変わるのだ。衣料品もリサイクルされ、循環することが当たり前になってほしい。そんな思いで、ファッションのあるべきかたちを模索しているのだ。

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最後に、関川さんは〈ANNUAL〉の今後についてこう話してくれた。
「〈ANNUAL〉とは、"1年"、"通年"という意味の英単語。『毎年つづいていくような服を』という思いが込められています。小さな"1年"を積み重ねていくことで、数十年先も持続可能な服作りを実現させたいです」



〈ANNUAL〉
HP https://annual-nz.com/
instagram https://www.instagram.com/annual_nz/


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