【58号 フィンランド特集】
ヘルシンキからフェリーで世界遺産へ
スオメンリンナの要塞

フィンランドの首都ヘルシンキから船でおよそ20分。
18世紀半ば、まだフィンランドがスウェーデンの一部だった時代に
ロシア軍に対して守りを固めるために建築された
世界遺産・スオメンリンナの要塞へ。

photography=TRANSIT



フィンランド空港から電車で約30分とアクセスの良い首都ヘルシンキ。南側に広がるフィンランド湾には、たくさんの小さな離島が浮かんでいます。そのうち、沖合約1kmにある6つの島に橋をかけて作られたのが、〈スオメンリンナの要塞〉です。約6kmの防壁と200ほどの建造物が残されています。

島の建設が始まったのは、1748年、フィンランドがスウェーデン統治下にあった時代。ロシア帝国と長年敵対関係にあったスウェーデンが守りを固める目的ために構えた星型要塞です。途中でロシア領になりロシアの要塞としても活躍したこともあり、スウェーデン、ロシア、フィンランドのそれぞれの時代に増改築を受け、3国の国防を担った独特な歴史を持っています。当初はスヴェアボリ(スウェーデンの要塞)という名称でしたが、1918年にスオメンリンナ(スオミの城塞)に改称。1991年に世界遺産に登録されました。

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アクセスもとても便利で、ヘルシンキ中心部のマーケット広場からフェリーに乗船して、片道15〜20分。自然や歴史が詰まった場所では、お買い物や町歩きとはまた違ったフィンランドらしさを満喫することができます。

チケットは乗船前にフェリー乗り場の自動販売機で購入可能。フェリーは市内の交通ネットワークの一部なので、トラムや地下鉄に使える「1Dayパス」はフェリーにも使用できます。

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小さなフェリーなので席数は多くありませんが、なかなかたくさんの人が乗っています。乗船時間はおよそ15分。デッキからはヘルシンキの街並みを見ながら移動することができます。途中、「海に浮かぶサウナ」としても知られるロンナ島を通り過ぎ(5〜9月下旬の夏季限定オープンなので今回は断念)、スオンメリンナの港に到着です。

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歴史的遺産がそのまま残っているだけでなく、観光地としてしっかり整備されているスオメンリンナ。歴史をより深く知るためのミュージアムや、数々のレストラン、バー、休憩にぴったりの素敵なカフェ、土産店も揃い、人気の観光地として整備も行き届いています。 一年中さまざまなイベントが開催されていて、レストランやカフェ、バーなども充実しています。

フェリーの運行本数は1時間に1〜2本ですが、午前6時台から夜中2時台まで便があり、ゆっくり夕食を楽しんでからヘルシンキに戻る、ということも可能です。

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さて、島についたらまずインフォメーションセンターで地図の冊子を入手して、早速スタート。地図に記されているオススメのルート「ブルールート」を基準に、寄り道しながら歩いて行きます。要塞は、フェリーを降りた港から島の反対側に位置し、徒歩で20〜30分程度です。島のいたるところにレンガ造りや石造り、バロック様式などさまざまな建物が点在していて、それらは兵舎や倉庫、将校たちの住宅などとして使われていたそうです。

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見所の一つは、スオメンリンナの教会。1854年に駐屯部隊のための正教会として建てられ、フィンランド独立後の1920年に福音ルター派の教会となりました。高さ27mの鐘楼は島でもっとも高く、航空・海上交通用の灯台として現在も稼働しています。

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さて、島の南西部に位置する星形要塞クスターンミエッカに到着です。スウェーデン時代に築かれた要塞と、ロシアによって構築された大砲などが備えられた海上防衛線を見ることができます。

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そしてさらに進むと、島のシンボルであるキングスゲートがお目見え。建設当時のスウェーデン国王アドルフ・フレデリクがこの場所に船を停留させていたことから、ここにゲートが作られたそうです。ゲートを潜ると、フィンランド湾の美しい海が広がります。近くの階段部分に腰掛けて、海を見ながら話し込んでいる人たちの姿もありました。戦争の跡とは思えないほど、今はとても静かで穏やかな時間が流れていました。

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大砲や、軍の式典用の門として使用されていたゲートを目の当たりにすると、遠い異国で起きた戦いの歴史も実感として捉えることができます。

マリメッコ、イッタラ、フィンレイソンといった数々の有名ブランドのショップや、カフェ・建築巡りなど、楽しみもたくさんあるけれど、ヘルシンキの自然や歴史を感じる離島へのショートトリップもオススメです。

もうすぐゴールデンウィーク、そして夏休み。久しぶりの海外渡航を考えている人も多いのでは。少しでも参考になると嬉しいです。

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さらに詳しくフィンランドの文化や歴史に触れるなら、TRANSIT59号フィンランド特集をぜひどうぞ。
TRANSIT58号『春夏秋冬フィンランドに恋して』

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