現代のスパイス料理界を牽引する、伊藤一城さん、山登伸介さん、水野仁輔さんが東京某所に集合。
この春、3人でメキシコに渡ってオアハカの料理教室で習ったレシピをもとに、モーレを作るという。
この機会を逃してはならない、と編集部が突撃取材。ここではその様子をお伝えします!
text=TRANSIT
photography=NAOKI SATO
左から
水野仁輔(みずの・じんすけ)●スパイスを通じて刺激的な体験を届ける「AIR SPICE」代表。カレーにまつわる著書200冊以上。「カレーのラジオ」を公開中。(写真左)
伊藤一城(いとう・かずしろ)●東京・押上〈スパイスカフェ〉のオーナーシェフ。 2021年、兜町にモダンスリランカレストラン〈HOPPERS〉を開店。(写真中)
山登伸介(やまと・しんすけ)●東京・三軒茶屋〈シバカリーワラ〉店主。定期的にインドを旅し、料理教室に参加するなどして、知識と経験を重ねている。(写真右)
キッチンに3人が集結。モーレ作りスタート!
煙で包まれたマンションの一室。目も喉も痛くて、思わずむせる人びと。キッチンには、真っ黒焦げの食材に、真っ黒のソース。どう見ても失敗作の料理(しかも火事寸前)である。だが3人は「これこそモーレ!」と自信満々だ。「とりあえずメスカルでも」(山登さん)とほろ酔いでスタートしたモーレ作り。さすが料理人、ハーブやスパイスの焙煎を手際よくこなしていく。
「ハーブを焙煎することってほかの国の料理にはないですね」(伊藤さん)。そんな疑心暗鬼の声も聞こえるなか、水野さんはなんとネギを真っ黒になるまで燃やし始めた。「この焦げが味わいに奥行きを生むんです」(水野さん)と、その後もバナナ、チリ、山登さんが捏ねて作ったトルティーヤまで次々と燃やし、黒焦げの食材をボウルに入れていく。
真っ黒なモーレ・ネグロ、完成!?
そうしてボウルいっぱいの焦げ食材にローストトマトなどを加えてミキサーにかけ、ぐつぐつと煮込む。すると色は真っ黒なのに、カレーのような香りが。最後にチョコレートを加えたらモーレの完成!恐る恐る一口食べてみると......おいしい!まろやかさのなかに焦げ特有の香ばしさ、そして奥深いチリの旨味が複雑に絡まる。「現地で食べたモーレよりおいしいかも」(山登さん)と、大満足のモーレ再現会となった。
●モーレ・ネグロのレシピ
【材料】
チレ類
・チレ・パシージャ・メヒカーノ......50g
・チレ・チワークリ・ネグロ......50g
・チレ・ムラート(orアンチョ・ネグロ)......100g
ハーブ類
・オレガノ......大さじ1
・メホラナ......大さじ1
・タイム......大さじ1
・オアハカオレガノ......大さじ1
スパイス類
・シナモン......1本
・ローレル......6枚
・オールスパイス......6粒
・クローブ......6粒
・クミンシード......大さじ1
・ナツメグ(すりおろす)......1/2個分
・ショウガ(生)......1個
・ニンニク......1株
・玉ネギ......1個
ナッツ類
・ピーナッツ......50g
・ピーカンナッツ......50g
・アーモンド......50g
・レーズン......50g
・プルーン......50g
・バナナ(2cm幅に切る)......1本
・パン......2個
・胡麻......50g
・トマト......1㎏
・トルティーヤ(硬いもの)......2枚
・チキンスープ......適量
・ラード......適量
・チョコ......適量
・塩......適量
【下準備】
1. チレ類は軸と種を取り除き、鉄板で乾煎りして乾燥させ、手で砕き、チキンスープに浸しておく。チレが水分を吸ってやわらかくなったら、ミキサーでペーストにし、ざるで濾す。
⇨A
2. 鉄板にハーブ類を入れてさっと焙煎し、ボウルに入れる。つづいてスパイス類をさっと焙煎し、ボウルに追加する。ニンニクと玉ネギをそれぞれ炭火の中に放り込んで真黒くくなるまで焼き、焦げた皮をむいてボウルに加える。ラードを熱し、ナッツ類を加えて揚げ、レーズンとプルーンを加えて炒め、ボウルに入れる。ラードを追加し、バナナとパンをつづけて炒め、ボウルに入れる。胡麻とスープを加えてミキサーでペーストにし、ざるで濾す。
⇨B
3. 鍋にトマトを加えて炒め、ミキサーでペーストにし、ざるで濾す。
⇨C
4. 鉄板にトルティーヤとチレの軸、種を加えて真っ黒になるまで燃やす。ボウルに入れて水を加えて洗う。ミキサーでペーストにし、ざるで濾す。
⇨D
【作り方】
1. 鍋にAを入れてじっくり煮る。
2. Bを加えてさらに煮る。
3. Cを加えてさらに煮る。
4. Dを加えてさらに煮る。
5. チョコと塩を加えてさらに煮る。
6. ふたをしてさらに煮る。
PROFILE
(左から)
伊藤一城(いとう・かずしろ)●東京・押上〈スパイスカフェ〉のオーナーシェフ。2021年、兜町にモダンスリランカレストラン〈HOPPERS〉を開店。
水野仁輔(みずの・じんすけ)●スパイスを通じて刺激的な体験を届ける「AIR SPICE」代表。カレーにまつわる著書200冊以上。「カレーのラジオ」を公開中。
山登伸介(やまと・しんすけ)●東京・三軒茶屋〈シバカリーワラ〉店主。定期的にンドを旅し、料理教室に参加するなどして、知識と経験を重ねている。
TRANSIT本誌ではここで紹介したメキシコの基礎情報のみならず、マヤやアステカといった数多の古代文明の秘密、タコスやメスカルなどの魅惑の食文化、独自の死生観や信仰心が込められたフィエスタなど、メキシカンカルチャーを大特集。つづきは
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