テキーラとメスカルはどう違う?
味、産地、飲み方を徹底解剖!
魅惑のメキシカン・アルコールの世界

「テキーラはショットで乾杯のイメージだし、メスカルは名前しか聞いたことがない......」。メキシコのお酒と聞いて、そんなことを思い浮かべる方も多いのでは?

でも、はっきり言ってそんなの超もったいない! 〈万珍酒店 / MANGOSTEEN〉の小林 透さんとともに、魅惑のメキシカン・アルコールの世界をご案内しましょう。


supervision=TORU KOBAYASHI
text=TRANSIT




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©︎MASAFUMI SANAI

テキーラにメスカル、ライムを入れたビール......など、メキシコといえばお酒をよく飲むイメージがあるが、実際のところどうなのだろうか? 「イメージどおり、昼間から40度くらいの強いお酒を飲んでいる人をよく見かけます(笑)」そう教えてくれたのは、世界各地のお酒とデリと雑貨が集まるお店〈万珍酒店 / MANGOSTEEN〉でバイヤーを務める小林透さんだ。

「メキシコではお酒を『仕事前にちょっとテンション上げるか』くらいの軽いノリで飲むんです。暑い国ということもあり、一番よく飲まれるのはビール。つづいて自国のお酒としての誇りがあるテキーラ、安価なラムが日常的に飲まれている印象です」とのこと。そして近年、国内外から熱い視線が注がれているのがメスカルだという。

「アメリカやヨーロッパ、そして日本を中心に、シェアが伸びています。小規模でチャレンジングな生産者も多く、独創性あふれるメスカルが増えていますよ。ちなみに、もともと大量生産が主流だったテキーラも、昔ながらの製法で造るクラフト・テキーラが急増中。いままで飲んだテキーラとはまったく違う味わいに驚くはずなので、ぜひ一度試してみてください」

というわけで、お馴染みテキーラと気になるメスカルについて、いったいなにがどう違うのかを比べてみました!


【テキーラ vs メスカル 比較6番!】


1. 味の特徴

20230719_p14-15_ymzk_1.jpg テキーラとメスカルはメキシコ原産の蒸留酒。ともにアメリカ大陸に生息する多肉植物のアガベ(リュウゼツラン)が原料だ。「大まかな違いとしては、テキーラはピュアでまろやかな味わい。工場での大量生産が多いので、質も安定しています。一方のメスカルは、アガベの豊かなフレーバーとスモーキーな香りが魅力。小規模なつくり手が大半で、品種や産地などにより違う味が楽しめます」(小林、以下同)


2. 生産地

20230719_p14-15_ymzk_2.jpg テキーラもメスカルも、ともに生産地が細かく指定されている。「テキーラはハリスコ州、グアナファト州など5州181の市町村で生産されています。名前の由来にもなったテキーラ村があるハリスコ州が、全生産量の90%を占めています。一方メスカルは、オアハカ州、プエブラ州など9州64カ所で生産されています。品質を守るため、厳重に保護されているんです」。ちなみに、これ以外の場所で造られたテキーラやメスカルは「リコール・デ・アガベ」と呼ばれる。

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3. 原料

20230719_p14-15_ymzk_3.jpg 原料はともにアガベだが、使用する種類が異なるという。「テキーラに使われるのは、アガベアスルという品種のみ。畑での栽培が比較的容易なため、大量生産に向いています。一方のメスカルは、指定産地であればアガベの種類はどれでもOK。野生でしか生育しない珍しい品種も使われますが、栽培しやすいエスパディン種が約8割を占めています」

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©︎Stan Shebs


4. 造り方

20230719_p14-15_ymzk_4.jpg 「加熱」という工程ひとつとっても、テキーラは機械で圧力をかけて一気に熱を加えるが、メスカルは地面に穴を掘って熱した石を載せ、2〜3日かけて蒸し上げる。当然、仕上がりもまったく違う。


5. 楽しみ方

20230719_p14-15_ymzk_5.jpg 好みの楽しみ方を見つけるのがベストだが、初心者であればまずは王道の味わい方を試してみよう。「テキーラはその飲み心地を楽しむために、よく冷やしてショットで飲むのがおすすめ。メキシコ流に、ライムや塩と一緒にどうぞ」

一方のメスカルは、アガベの香りを楽しめるよう、常温をすすめているという。「常温のほうが、メスカルならではの複雑な味と香りが花開きます。メキシコではオレンジなど甘みのある柑橘や、グサーノというイモムシとスパイスを粉末にしたものと一緒に飲むことも。日本ではなかなか手に入らないグサーノの代わりに、塩+チリパウダーとともに味わってもいいですね」


6. おすすめ銘柄


▶︎テキーラ 3選


エレンシア(Herencia de Plata)
テキーラ業界初の政府公認カーボンニュートラル化メーカーである老舗ブランド。コクと甘みの絶妙なバランスで、テキーラ入門にも最適。 20230627_p14-15_ymzk_1.jpg

ウノ・ドス・トレス(123 ORGANIC TEQUILA)
オーガニック認定を受けた上質な原料のみを使用し、スパイスやミネラルの生き生きとした味わいが特徴。容器には再生ガラスを使うなど、持続可能性にも配慮。 20230627_p14-15_ymzk_2.jpg

サンタネラ(SANTANERA)
新進気鋭のメーカーが手掛けるテキーラ。オーガニックな栽培方法にこだわり、発酵時にクラシック音楽を聞かせるなど独自の製法が光る。 20230627_p14-15_ymzk_3.jpg


▶︎メスカル 3選


アマラス(Amaras)
もっともメジャーなエスパディン種から造られた一本。甘い香りとスムーズな口当たりで飲みやすい。アルコール度数も低めなので、最初の一本に◎。
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◆デルンベス(Derrumbes)
別の産地で製造された5銘柄を擁する「デルンベス」は、アガベのテロワールを感じるのにぴったり。手始めにスパイシーさが特徴の「san luis potosi」を。
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アルタレス(Altares de mi Tierra)
しっとりした口当たり、濃厚で余韻が深いアガベの香りは、1ランク上の味わい。チョコレートを漬け込み蒸留しているため、ほのかにカカオが香る。 20230627_p14-15_ymzk_6.jpg

ぜひ奥深いメキシコのアルコールの世界を味わってみてください。本誌では、テキーラやメスカルだけではなく、現地のバーや食堂で出会えるお酒についても紹介しています。

PROFILE
小林 透(こばやし・とおる)●メキシコをはじめ世界中の珍しい酒を収集し、輸入や卸、小売販売を行う〈万珍酒店 / MANGOSTEEN〉のバイヤー。メキシコへの渡航歴も多数。酒席で〆に頼むのはメスカル。



TRANSIT本誌では、マヤやアステカといった数多の古代文明の秘密、タコスやメスカルなどの魅惑の食文化、独自の死生観や信仰心が込められたフィエスタなど、メキシカンカルチャーを大特集。つづきはこちらから!

『TRANSIT60号 メキシコ マジカルな旅をしよう!』


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