今日は弘法大師空海の誕生を祝う「いろはまつり」の日。高野山や各地の真言宗寺院ではさまざまな法要や伝統行事が催されます。
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弘法大師空海といえば、その超人離れしたエピソードが数多く残ります。讃岐の地に生まれ、幼い頃に断崖絶壁から飛び降りたところを突如現れた天女に助けられたり、室戸岬での修行中に、虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)の化身である明星(みょうじょう)が自らの体内に飛び込んできたり。
つねに厳しい自然のなかに身を置き自らを戒めるとともに、雨の少ない四国で灌漑事業に力を入れるなど、人びとのための勤めも欠かしませんでした。
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そんな空海を慕い、空海が修行を積んだ道場を弟子がめぐりはじめたことが、四国八十八ヶ所霊場のはじまりといわれています。
四国全土に広がる八十八ヶ所の寺院を訪ねる通称「お遍路」の総距離は、およそ1400km。お遍路をする「お遍路さん」は、つねにお大師さまと一緒にいる「同行二人」(どうぎょうににん)の心をもって巡礼します。
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延々とつづく山道や炎天下にさらされる海岸沿いの砂浜など、一筋縄ではいかない場所を通らなければならないことは、厳しい修行を自らに課した空海の道場への道であることを物語っています。
しかし、その道中に広がる険しくも美しい自然はお遍路の魅力のひとつ。豊かな自然のなかに佇む歴史ある寺院は、数百年もの間お遍路さんを惹きつけてきました。
©︎Kei Fujiwara
なかでも、巨大な奇岩が本堂の背後に迫る第四十五番の岩屋寺(いわやじ)や、霊峰石鎚山(いしづちさん)を望む第六十番の横峰寺(よこみねじ)、瀬戸内海の絶景を望む屋島の高台にある第八十四番屋島寺(やしまじ)など、山も海も近い四国の豊かな表情が、八十八ヶ所それぞれに個性と彩りを与えています。
第四十五番 岩屋寺 ©︎Kei Fujiwara
第六十番 横峰寺の奥の院 ©︎Kei Fujiwara
お遍路には第一番から第八十八番まで順番にめぐる順打ちと、第八十八番から逆回りにめぐる逆打ち(さかうち)、順番関係なくめぐる乱れ打ちがあります。また、数回に分けてめぐる区切り打ちもOKなので、1400kmという道のりに気負いせず、まずは気になる場所から訪ねてみてはいかがでしょう。