ド・ゴール、シラク、マクロン......
フランス大統領クロニクル!
そして次期候補は!?

1958年、シャルル・ド・ゴールの手によって第五共和政へと移行したフランス。
議会の権力が弱く大統領が強い執行権をもつ体制下で、
彼の国を導いてきた8人の大統領たちは、いったいどんな人物なのだろうか?
現在のマクロン氏までの歴代大統領をみていこう。

text=YUTA YAGISHITA



◀︎共和党系▶︎
シャルル・ド・ゴール(1890-1970)/Charles de Gaulle


独立外交の礎を築いたフランスの「国父」。


対独抗戦を指揮しフランスを第二次世界大戦勝利へと導いた元軍人で、1959年に第五共和政初の大統領に就任。自律した外交を重視し、アメリカと一定の距離をとると同時にドイツと接近する。また、60年代には核実験を繰り返し核保有を推進した。65年の大統領選で再選するが68年の5月革命で反対運動が起こり、翌年に辞任。

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© Pictorial Press Ltd / Alamy Stock Photo



◀︎共和党系▶︎
ジョルジュ・ポンピドゥー(1911-1974)/Georges Pompidou


フランス「黄金の30年」を牽引。


1969年に就任したポンピドゥー。彼の政権下でフランスは経済成長と近代化をつづけ、69年に現EUの礎を築くなど、第二次大戦終了からつづいた「黄金の30年」の最後の数年を謳歌。しかし73年に第一次オイルショックに見舞われると経済は低迷した。74年、在任中に白血病で死去。

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© Keystone Press / Alamy Stock Photo



◀︎独自路線▶︎
ヴァレリー・ジスカール・デスタン(1926-2020)/Valéry Giscard d'Estaing


経済改革を推し進めた、若き48歳の大統領。


1974年の大統領選にて、当時最年少の48歳で当選。オイルショックなどの余波がつづくなか、高速鉄道TGVの建設や欧州通貨制度の発足にかかわるなど経済改革を進める。また、健康相シモーヌ・ヴェイユとともに処罰の対象だった人工中絶を合法化した。だが死去寸前にセクハラで告発され、若干晩節を汚した感も。

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© World History Archive / Alamy Stock Photo



◀︎社会党系▶︎
フランソワ・ミッテラン(1916-1996)/François Mitterrand


EU創設に携わった、左派政党出身大統領。


第五共和政初の左派政党出身の大統領。企業の国有化、有給休暇の拡大など左派的な政策を行うが、財政の悪化を招き方針転換。ほかに死刑の廃止、同性愛を禁じる刑法を撤廃。1992年にはマーストリヒト条約に署名し、EUの 創設にかかわる。通算2期14年にわたり大統領を務めた。

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© dpa picture alliance / Alamy Stock Photo



◀︎共和党系▶︎
ジャック・ルネ・シラク(1932-2019)/Jacques René Chirac


日本好きで知られる保守派の大物。


1995年に初当選したシラクは高い失業率の改善に尽力。また、第二次世界大戦中のユダヤ人一斉検挙に対する仏国家の責任を初めて認めた。2002年に再選すると、 03年のイラク戦争では戦争の開戦に反対し評価を高めるも05年の国民投票でEU憲法条約の批准が否定され求心力を失う。

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© Allstar Picture Library Ltd / Alamy Stock Photo



◀︎共和党系▶︎
ニコラ・サルコジ(1955-)/Nicolas Sarkozy


経済政策を主導しつつ、移民には強硬姿勢。


シラク政権の元内相で2007年大統領に。自身もハンガリー系移民出身だが、移民問題に関してはタカ派で知られ、仏国籍の取得を難しくしたり、移民の若者の暴動が起きた際には彼らを「ゴミ」と呼んだりなどして非難の的に。経済面では年金受給年齢の後ろ倒しや相続税の軽減といった改革を主導した。

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© 360b / Alamy Stock Photo



◀︎社会党系▶︎
フランソワ・オランド(1954-)/François Hollande


同性婚を合法化するも、人気はいまひとつ。


2012年の大統領選でサルコジに勝利し当選。同性婚の合法化、企業の税負担引き下げなどの改革をするが、自身の不倫スキャンダル、財政赤字の悪化などの理由で人気が低迷。また15年のパリ同時多発テロ事件ではテロとの戦いを宣言、IS(イスラム国)への空爆に積極的にかかわった。

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© dpa picture alliance / Alamy Stock Photo



◀︎独自路線▶︎
エマニュエル・マクロン(1977-)/Emmanuel Macron


フランス史上最年少!ときに独善的な姿勢に批判も。


社会党出身。2016年に前進(現在は「再生」)というリベラル政党を立ち上げ、17年に極右候補マリーヌ・ル・ペンに勝利し39歳の若さで大統領に就任。改革・規制緩和路線を進めるが、議会を軽視した強硬な姿勢でときに抗議運動を巻き起こす。22年の大統領選で再選を果たすが議席においては極右勢力の躍進を許した。

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© dpa picture alliance / Alamy Stock Photo




◯次世代の大統領候補者 3名!◯


1. マリーヌ・ル・ペン/Marine Le Pen


父で移民排斥派・反ユダヤ主義のイメージが強いジャン・マリーから党を引き継ぎ、反移民のイデオロギーは変えずに国民連合を「普通の政党」へと変化させることに成功。2027年大統領選の最有力候補ともいわれる。

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© Kremlin Pool / Alamy Stock Photo



2. ガブリエル・アタル/Gabriel Attal


現在首相を務める、マクロン後継者争いの候補者の一人。教育相をへて2024年1月にわずか34歳でその座についたが、欧州議会選の辛戦が濃厚ななかいつまでこのポストにいられるかは不明との声も。仏初のオープンリー・ゲイの首相。

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3. フランソワ・リュファン/François Ruffin


分裂し先が見えない左派政党の候補として可能性があるのが彼。中産階級出身の元ジャーナリストで、 LVMHグループのアルノー会長を批判したドキュメンタリーはカンヌ映画祭で表彰された。現在は政党不服従のフランスの下院議員。

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