【56号 世界の山を旅しよう】
#Travelog
アパラチアントレイル旅@アメリカ東海岸
TRANSIT編集部の小さな旅の記録を、徒然なるままに写真と言葉で綴った「Travelog」。旅の途中でノートの隅に走り書きした電車の時刻、街角で耳にした音楽、コーヒースタンドで済ませた朝食、現地の人と交わしたいくつかの言葉......そんな他愛もない旅の断片たちを集めた。

ここでは、TRANSIT56号『世界の山へ旅しよう!』より、取材時の合間に撮影した写真と取材ルートを掲載。

アメリカの東海岸に位置するアパラチア山脈。その山並みを貫くように南北に伸びる、アパラチアン・トレイル(A.T.)。ジョージア州のスプリンガーマウンテンから、メイン州のカターディンマウンテンまで、全長3500kmにわたりつづくトレイルを歩き通すハイカーたちがいる。10日間程度、ときに車を走らせながら、ヴァージニア州に位置するトレイルの一区間を歩く合計7日間のセクションハイクを行なった。

【ROUTE】アメリカ合衆国・ノースカロライナ州とバージニア州

photo & text=KANAMI FUKUDA(TRANSIT)






ジョージア州・アトランタ空港から車に乗り換え、北へ向かう。まず立ち寄ったのは、ノースカロライナ州にある、山の麓の小さな町、ホットスプリングス。山から降りて、体を休めたり、食料などを補給するハイカーたちで賑わっている。宿泊したのは南北戦争前から建っているという、コロニアルスタイルの館。南北戦争時にでは臨時の兵士病院としても使われたという歴史ある建物。現在は元スルーハイカーがオーナーとなり、やってくるハイカーに憩いの場を提供するゲストハウスになっている。パッキングなどハイキングに向けた準備を整え、翌朝ファーストハイクへと発った。

20220623_02.jpg ゲストハウス〈Sunnybank Inn〉。歴史的建造物の中に調度品が並ぶ


First Hike(2 days)


最初のハイキングの場所に選んだのは、バージニア州のグレイソンハイランズ。標高約1700m程度の高地がつづく高原の山。

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あいにくの雨だが、雨具を身につけて歩き始める。

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ここは、野生のポニーが生息していることで知られる。人馴れしているのは、ハイカーにも警戒心なく近づいてくる。

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トレイル場での水の補給は小川で。ハイカーたちは浄水フィルターを必ず持ち歩き、水を汲んで濾過して飲む。

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翌朝は朝日が上る前にテントを畳んで歩き始める。

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トレイルでは、いろんなハイカーとの出会いがある。グレイソンハイランズのトレイルを降りると、これから歩き出そうとしている学生の集団に出会った。大学の課外活動の一環で来たという。みんなお揃いの新品のバックパックに、年長者のアドバイスを聞きながら慎重にパッキングをしていた。


Second Hike(2 days)


ヴァージニア州内を車で数時間北上し、フラットトップマウンテン周辺のトレイルからハイクを再開した。緩やかな傾斜がつづく山道を登る。

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トレイル横を流れる川べりでひとやすみ。

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ときおり、小川を越えながら、ひたすら森を歩いていく。水面が美しい池に出合う。

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キャンプ地に到着。訪れたのは4月中旬、19時過ぎまで日が出ているので、明るいうちに設営も食事も済ませられる。

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このエリアでもたくさんのスルーハイカーに遭遇。スルーハイカーの多くが、1人でスタートしているが、トレイル上でともに歩く仲間ができるそう。意気投合し、ゴールまでを一緒に歩くことにした仲間同志を、トレイルのファミリー、「トレムリー」と呼ぶ。

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©︎ERIKO NEMOTO


ここでのトレイルを終えたら、山の麓のゲストハウス〈Woods Hole Hostel〉へ。オーナーのネヴィルが美味しいご飯と清潔な寝床をハイカーに提供している。温かいもてなしにすっかり安らぎを得て、ハイカーたちは疲れを癒やしている。


Last Hike(3 days)


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最後のハイクを前に、トレイルエンジェルの家に滞在させてもらう。 A.T.の周辺には、ハイカーに食事を振る舞ったり、車に乗せたり、はたまた家に泊めたりと、有志でハイカーをサポートする人のことを、彼らの優しさに敬意を込めて「トレイルエンジェル」と呼ぶのだ。お世話になったのは、ホーマー&最後のハイクを前に、トレイルエンジェルの家に滞在させてもらう。 A.T.の周辺には、ハイカーに食事ご飯を振る舞ったり、車に乗せてあげたり、はたまた家に泊めてあげたりとなど、有志でハイカーをサポートする人のことを、彼らの優しさに敬意を込めて「トレイルエンジェル」と呼ぶのだ。お世話になったのは、ホーマー&トゥレッサ夫妻。彼らもまた、かつてA.T.を歩き通したハイカーだ。

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ラストハイクは、A.T.でもっとも人気のあるスポット、「マカフィーノブ」と「ティンカークリフ」を目指す区間。私有の牧草地からスタートし、徐々に標高が上がっていく。

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早朝出発して森の中を抜け、岩がちになるトレイルを歩いていくと、夕暮れ前にマカフィーノブに到着。デイハイクをする旅人が、崖の縁に腰掛けて黄昏れていた。

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翌日、朝日を見たくて再びマカフィーノブへ上がる。もうすぐ太陽が上ってくるかというとき、スルーハイカーたちが息を切らしてやってきた。

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翌日も、森や岩場を歩き、夕暮れまでにティンカークリフへ到着。南北につづくアパラチア山脈が一望できる。壮大なパノラマを見ながら夕飯の支度。

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トレイル最終日は、アップダウンを繰り返しながら徐々に麓へ降りていく。ときおり現れるひらけた場所からの眺めを堪能する。

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標高が下がると、芽を出す植物が増えてきて、鮮やかな緑色の森に変化する。ようやく車道が見え、私たちのトレイル旅が無事に終了した。

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アトランタへ戻る長いドライブの道中、A.T.の序盤の地点、ジョージア州にあるニールズギャップへ立ち寄った。大きな木の枝に、たくさんの靴がぶら下がっている。スルーハイクを志したけれど、ここでリタイアを決めた人たちが、自分が履いていた靴をここに残していくのだという。毎年3000人程度の挑戦者のうち、ゴールであるメイン州までたどり着くのはわずか300人弱という。旅で出会ったハイカーたちの踏破を願って、帰路に着いた。




アパラチアントレイル旅の詳細は、TRANSIT56号『世界の山へ旅しよう!』をご覧ください!

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