【58号 フィンランド特集】
高橋ヨーコ×森下圭子の旅の話
イベントレポート

20221214_onetokyo_40.jpg 日照時間も短くなり、夜の街にはキラキラと輝くイルミネーションが増え、クリスマスムードが漂うこの季節に、最新号TRANSIT58号『春夏秋冬フィンランドに恋して』の発売記念として、12月14日(水)にONE@Tokyoでトークイベントを開催しました。

20221214_onetokyo_1.jpg TRANSITでは以前にも北欧号やオーロラ号などでフィンランドを特集したことがあるものの、丸ごと1冊フィンランドを取り上げたのは、今回がはじめて。会場もあっという間に予約が埋まり、満員での開催となりました。

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お腹も空く、19時30分に開場。フィンランド出身の店主が営む鎌倉の〈ライ麦ハウスベーカリー〉のシナモンロールと温かいサーモンスープをいただきながら、イベントがスタート。

編集長の林が聞き手となり、フィンランド号の制作に関わった写真家・高橋ヨーコさんとフィンランド在住でムーミン研究家や文筆家としても知られる森下圭子さんが登壇。高橋ヨーコさんは、今年の10月中旬からヘルシンキからロシア国境の街ハミナやペルリンキ諸島を巡り、森下圭子さんもコーディネーターとして数日間ヨーコさんと旅をともにしました。

実はヨーコさんと森下さんは映画『かもめ食堂』でも一緒に仕事をしている間柄。ヨーコさんは映画のスチール撮影のフォトグラファーとして、森下さんは現地コーディネーターとして関わっていたこともあって、呼吸がぴったり。取材旅の間もこんな雰囲気だったのだろうなと目に浮かぶようなふたりの楽しい会話に、会場からも終始笑い声がこぼれていました。

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「退屈が好き。電気もガスもないフィンランドの小島でもずっと写真を撮っていられましたね」と写真家の高橋ヨーコさん。

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今回のフィンランド号でフィンランドの春夏秋冬のエッセイや「アキ・カウリスマキが照らす映画の灯」を執筆した森下圭子さん。

高橋ヨーコさんと森下圭子さんの旅の話は、ふたりが取材の間に出会ったフィンランドの人たちの話から始まりました。

アキ・カウリスマキの映画に出てくる人たちのように、フィンランドの人たちは一人の時間をどのように過ごしているか、孤独をどう受け止めているのか、そんなことを考えながら、撮影をして文を書いたという高橋ヨーコさん。アキの映画に出てくるような人たちに出会える場所を、と森下圭子さんに話して、旅の行き先を決めていったといいます。

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高橋ヨーコさんが撮影・執筆した「街の灯、島の彼方」より。

フィンランドに暮らす森下さんからすると、首都ヘルシンキはここ10年ほどの間にハイブランドのアパレルショップやグローバル展開するバーガーショップなども入ってきて、イケイケな街になりつつあると感じていたそう。それでもヨーコさんのリクエストから、映画のように静かで仄暗くロマンが残っている場所をと森下さんがリストアップしたのが、カラオケショップ、ホットドッグスタンド、フィンランド音楽が流れる喫茶店などなど。ときには、街で見かけた通りすがりのおじさんの背中を追いかけて、同じお店に入ってみたり......。

「この人も、あの人も、そこら中にアキの映画で出てくるような人がいましたね。なんというか"おかしみ"がある。私がカメラを持っているのを見て、『あぁ、撮ってるな』とわかったうえでそっとしておいてくれて、撮り終わったら『あ、終わったね』と目が合って少し笑う。話しかけようとすると、『いやいや、私は』というように恥ずかしがったり」とヨーコさん。

「ヨーコさんの写真は、なんというか『気配』がある。ヨーコさんをそういう場所に連れていきたいなと、改めてヘルシンキやほかのエリアも歩いてみて、映画みたいな懐かしいフィンランドが残っているといころには残っているんだなと感じましたね」と森下さん。
そして話は、ヨーコさんと森下さんが起こしたミラクル、アキ・カウリスマキ監督インタビューの裏話に。

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「アキ・カウリスマキが照らす映画の灯」より。

実は、フィンランド取材前にアキ監督に連絡をしていたものの、なかなか返信がなく、取材も難しいかと思っていたヨーコさんと森下さん。それでも、せっかくここまで来たのならと、アキがつくったカルッキラの映画館Kino Laika(キノ・ライカ)を訪ねようと、旅程に組み込んでいました。

ヘルシンキから電車で1時間ちょっと。アキ監督が暮らすカルッキラの街に着いて、ヨーコさんと森下さんがシアタールームを見ていると、アキ本人がふたりの目の前にふらっと現れたのです。なんでも、数日前に壊れてしまった館内の椅子を修理しにきたのだとか。 「この間、子ども向けの映画の上映会をやっていたんだけど、子どもが映画に興奮しすぎたみたいで椅子が壊れてしまってね」とアキ監督。

椅子が壊れていなかったら、TRANSITの監督インタビューが読めなかったかと思うとまさに奇跡! 監督本人に出会えなかったとしても、Kino Laikaの映画館にはカウリスマキ映画に使われていた撮影道具が置かれていたり、アキが読んでいた本があったりと、映画の世界に入り込んだような空間で旅先としてもおすすめです。

高橋ヨーコさんの蔵出し写真を見ながら、ヘルシンキから一時帰国中の森下圭子さんの旅のお話を聞ける貴重な時間はあっという間に過ぎていきます。

ムーミンや映画『かもめ食堂』といったなじみ深い作品があり、アルヴァ・アアルトやカイ・フランクに代表される建築・デザインの巨匠たちがいて、先進的な福祉制度や環境保護、男女平等な社会から「世界一幸せな国」としても評価されているフィンランド。ここ数年は、サウナの本場としてサウナーからも熱い視線を注がれるなど、まだまだ底知れぬ魅力がたくさん。

残念ながらトークイベントに参加できなかった方も、ぜひ本誌の記事をチェックしてみてください。TRANSIT最新号『春夏秋冬フィンランドに恋して』は好評発売中です。

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TRANSIT58号『春夏秋冬フィンランドに恋して』 定価:1,800円 + tax

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