▶︎Interview 上白石萌音
メキシコ・メモリーズ
「私にとっては "帰る" 場所」

小学生の頃、メキシコで暮らしていたという上白石萌音さん。
そのときの強烈な体験の数々が、自身のパーソナリティや今の活動に多くの影響を与えているという。
上白石さんにとってのメキシコは、行く場所ではなく"帰る"場所。

*本記事は、『TRANSIT 60号 メキシコ マジカルな旅をしよう!』の記事の一部を抜粋しています。

photography=YUSUKE ABE(YARD)
text=KEISUKE KIMURA
hair & make-up=TOMOKO TOMINAGA (alllure)
styling=TAKASHI SHIMAOKA (Office Shimarl)


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やさしくて、明るくて、お節介で、憎めない。


―――上白石さんは幼少期の3年間をメキシコで過ごされたそうですが、なぜまた、メキシコに?

上白石萌音(以下、上白石):父が教師をしていて、その関係でメキシコシティに住んでいました。

―――今でも当時の思い出は色濃く残ってますか?

上白石:断片的ではありますけど多感な時期でもあったので、けっこう覚えていますよ。ソチミルコという街があるのですが、運河が流れていて、カラフルなボートがいっぱい並んでいるんです。そこには観光客が乗るボート以外に、トウモロコシ屋さんのボートとか、マリアッチが乗っているボートもあって、トウモロコシが食べたくなったら「お願いしまーす!」って呼んで買ってみたり、マリアッチのボートを呼べば、私たちのボートに乗ってきて演奏してくれたりするんです。そこは大好きでしたね。あと、ベジャス・アルテス宮殿という古い劇場では、メキシコ舞踊の公演をよくやっていたんです。そこも家族で、何度も観に行ったのを覚えています。

―――上白石さんは踊りも得意ですが、もしかして、メキシコの民族舞踊も習っていたんですか?

上白石:ちょっとだけ習っていましたね。最後の4カ月ぐらい。なので、2曲だけ踊れます(笑)。

―――スペイン語はどうでしょうか?

上白石:当時はペラペラだったんですけど、使う機会がないから忘れちゃいました。でも、スペイン語はフィーリングの言葉だそうで、単語の入れ替えが可能で、語順とかどうでもいいんですって。発音も明るくて、ムーチョ(mucho)とか響きもいいじゃないですか(笑)。言葉が、国を作ってる感じもありますよね。 真っ直ぐで、明るくて、わかりやすくて、おおらかで。ちなみに、はじめて覚えたスペイン語はバカ(vaca)とアホ(ajo)。バカが牛、アホはニンニクの意味なんですけど。

――― 子どもってそういうの、大好きですものね(笑)。メキシコにはいろんな魅力があると思いますが、とくにどんなところが好きですか?

上白石:やっぱり、人が好きです。優しくて、明るくて、お節介で。それと、みんながみんなそうじゃないですけど、約束を守らない人も多いし、知ったかぶりもするんです。だけどいつもニコニコしていて、幸せそうで、憎めないんです。小さいながら、学ぶことがいっぱいあるなって思いました。好き嫌いはわかれるかもしれないけど、そういう部分も含めて私はメキシコが大好きなんです。

―――そのユルさが心地いいと。

上白石:そうですね。あと、メキシコって貧富の差が激しいんです。だけど貧しい人たちも、本当にたくましくて、自分の国を愛していて、いかに楽しくできるかを考えていて。もちろん、そうじゃない人もいますけど、そうした姿を見て、何事も楽しまないと損だなって思うようになりました。

―――そのマインドは今も影響を受けていますか?

上白石:心配性ではあるんですけど、楽天的というか、そういった面もけっこうあると思います、良くも悪くも(笑)。

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私にとっては "帰る" 場所。


―――メキシコへは小学生以来、行ってないですか?

上白石:そうなんです。まったく帰れてないんです。帰るときは家族4人で、とは話してるんですけど。

―――「行く」じゃなくて「帰る」なんですね。

上白石:そう、3年しかいなかったんですけど、なぜか帰る感覚なんです。かぶれてますね(笑)。 でも、それくらい大切で、大好きな場所で。

―――今帰れるとしたら、何がしたいですか?

上白石:とりあえずタコスを食べて、あとは日本人の家族の友達がいるので、その人たちとも会いたいです。当時行った場所も巡り尽くしたいですね。ソチミルコはもちろん、テオティワカンのピラミッドももう1度訪ねたいです。

―――年齢を重ねてから行くメキシコは、当時とはまた、違った印象を抱くでしょうね。

上白石:そうだと思います。あの頃、感じられたものが感じられなくなってるかもしれないけど、理解できなかったことが理解できる旅になりそうだなって。ここまで自分の変化や成長を感じられる場所って、メキシコ以外ほかにないんじゃないかなって思います。

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「テオティワカン遺跡にあるピラミッドにて。頂上までの道のりが本当に大変で、脱落者も多いなか、父と2人で頂上まで登り切りました」




TRANSIT本誌では、上白石さんのインタビューの完全版を掲載しています。
そのほか、マヤやアステカといった数多の古代文明の秘密、タコスやメスカルなどの魅惑の食文化、独自の死生観や信仰心が込められたフィエスタなど、メキシカンカルチャーを大特集。上白石さんも愛するメキシコの日常を想いを馳せてみてはいかがでしょう。

『TRANSIT60号 メキシコ マジカルな旅をしよう!』
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■PROFILE
かみしらいし・もね●1998年生まれ、鹿児島県出身。2011年の第7回「東宝シンデレラ」オーディションにて審査員特別賞を受賞、同年に俳優デビュー。現在は演技のみならず、歌手やナレーター、執筆業など活躍の幅を広げている。2023年6月16日から東京国立博物館で開催される特別展「古代メキシコ―マヤ、アステカ、テオティワカン」では、音声ガイドナビゲーターを務めている。

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