入山杏奈の移住体験談 vol.1
メキシコ前、メキシコ後の私
「"どうにかする力"が身についた」

まさかメキシコで暮らすことになるとはーーー。AKBとしてアイドル街道をひた走るなか、 あるとき仕事をきっかけにメキシコ行きを決めた入山杏奈さん。今では「ラテンの血が流れているのかも!」と笑う彼女に訊いた、メキシコ移住のススメ。

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photography=MASAFUMI SANAI
text=MAKI TSUGA(TRANSIT)




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メキシコシティのコンデサ地区のカフェで。


青天の霹靂、仕事でメキシコへ!?


―――メキシコの学園ドラマ『Like, La Leyenda』に出演するため、単身で渡墨された入山さんですが、もともと海外に対する憧れはありましたか?

入山杏奈(以下、入山):めちゃくちゃありました。アメリカのドラマ『ゴシップガール』や『ハイスクール・ミュージカル』『13の理由』が大好きで、海外の学園ドラマに出てみたいという想いはありました。だけど英語がしゃべれなかったので、漠然と「できたらいいな」と思っていただけでした。

―――メキシコのお仕事はどんなふうに決まっていったんですか?

入山:AKBのメンバーからメキシコのドラマに出演する役者を1人選ぶオーディション企画があったんです。最初は「海外? メキシコ? 自分が行くのは難しいかな」と思っていたんです。でも、だんだんその話が気になってきて。ほかのメンバーがその思い出話をしているのを聞いたら嫉妬しちゃうかも、行くなら私が行きたい、これはご縁だと。それでオーディションを受けて、ドラマのメンバーに選んでいただいて、メキシコに行くことになったんです。

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―――まわりからはどんな反応でしたか?

入山:亥年で猪突猛進タイプなので、メキシコへ行く前は家族にすごく心配されました。メキシコに行ったら、危険地帯に踏みいって危ない方向に突っ走ってしまうんじゃないかと。そこは気をつけていますね。

―――メキシコ行きが決まってから準備したことはありますか?

入山:出発までに準備期間が約4カ月あったんですが、メキシコ人のドラマのプロデューサーと事前に打ち合わせしているときに「スペイン語は勉強してこなくていいよ。日本から来たミステリアスな転校生の役だから、話せないほうがリアルでいい」って言われたんです。その言葉を鵜呑みにして何も勉強せずにメキシコに行ったので、最初は大変でしたね(笑)。スペイン語の会話能力は0。英語も中学英語レベルでした。

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メキシコ出発前、仲良しのメンバーが壮行会を開いてくれたときの一枚。ケーキを持っているのが入山さん。©ANNA IRIYAMA

―――制作現場では、日本とメキシコの違いを感じることはありましたか?

入山:メキシコでは本当に予定通りに進まない。香盤表通りにいかないし、監督が遅れてくるし。最初の撮影日、現場入りして、メイクして、朝から待っていたんですが、なかなか呼ばれなくて。6時間くらい経って、トントンとドアがノックされたので、やっと出番だと思ったら、「今日は杏奈のシーンないから帰っていいよ」って言われて。それが2日連続(笑)。3日目にようやくクランクインしました。

メキシコのすごいところは、最後はちゃんと帳尻を合わせるところ。日本でこのスケジュールでやっていたら絶対間に合わない気がするんですが、メキシコの現場はどうにかしてしまう。メキシコで学んだことといったら「待つ力」。そして「どうにかする力」。適応能力みたいなものはすごく鍛えられた気がします。準備通りにいかないのがここでは当たり前なので、その場で対応しなければいけない。

たとえば、生徒同士がセリフを言い合うシーンの撮影をしていたときに、いざカメラがまわりはじめたらラップバトルになっていたことがあって。台本には一言も書かれていなかったよな......と思いながら、私もラップにノッて踊ってました(笑)。

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メキシコ前、メキシコ後の私。


―――メキシコに来て変わったことは?

入山:周りからは「明るくなった」ってよく言われます。家族や友人の前ではおちゃらけたりするので自分では明るいタイプだと思ってるんですが、日本にいるときは人前では「ちゃんとしなきゃ」と気を張っていたので真面目に見られがちだったんだと思います。それがメキシコに来てから周りにいる人を見ていて、いい意味で「ちゃんとしなくていいんだ」と思えて解れたのかもしれません。

あとは踊るのが好きになりました(笑)。実はアイドル時代は、歌もダンスも上手じゃないから、「歌うのが好き、踊るのが好き」って言えなかったんです。ダンス嫌いって公言していたくらい。でもメキシコに来て、上手い下手ではなくて、好きなものは好きって言っていいんだなと思えるようになったんです。それまで人にダンスをジャッジされるから、ダンスが嫌いだったんだなって気がつきました。

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公園でダンスのレッスンをしている人たちと一緒に、サルサを踊る入山さん。

メキシコではじめたことの一つが、サルサ。知り合いに誘われてサルサ教室に行ってみたら、それがすごく楽しくて。メキシコの人って、割と誰でもサルサを踊れるんですよね。今、この街角で大きい音でサルサがかかったら、みんな踊ると思いますよ。ホームパーティをしていても、自然と音楽がかかって踊りはじめる。ダンスがコミュニケーションの一つなんですよね。踊りが人間本来のものという感じがすごくする。昔の人って何もなかったから踊ってたのかなとか、音楽が鳴ったら自然と体が動くものなんだろうな、と感じます。

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■PROFILE
入山杏奈(いりやま・あんな)●千葉生まれ。AKB48として活躍する最中、メキシコのTVドラマ『Like, La Leyenda』に出演するため、2018年に渡墨。2022年に AKBを卒業。現在はメキシコを拠点に活動。『ラジオまいにちスペイン語』(NHK)などに出演。

Instagram:@iamannairiyama
YouTube:@Annalamexicana

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TRANSIT本誌では、入山杏奈さんのメキシコ移住体験のほかにも、古代文明、食文化、アートといった、さまざまなメキシコを紹介しています。エネルギー渦巻くメキシコを知りたい方はこちら!

『TRANSIT60号 メキシコ マジカルな旅をしよう!』


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