イタリアデザインはメーカーの存在抜きには語れない。高い技術力はもちろん、かつてはファミリービジネスゆえに、スピーディーな意思決定や革新的なアイデアに社長の独断でチャレンジできる土壌があった。ここでは、各メーカーの名作家具を紹介します。
text=SANAE SATO
●Cassina/カッシーナ
◆Maralunga(マラルンガ)
1973年/Vico Magistretti(ヴィコ・マジストレッティ)
自転車用チェーンの仕組みを取り入れ、ハイバックからローバックへと変えられる革新的なソファ「マラルンガ」。ヴィコ・マジストレッティの案に納得しなかったチェーザレ・カッシーナが、プロトタイプを殴り、壊れた背もたれにヒントを得て生まれた。
¥902,000~(カッシーナ/カッシーナ・イクスシー青山本店)
◆Cab(キャブ)
1977年/Mario Bellini(マリオ・ベリーニ)
金属製の骨格にサドルレザーを被せるという画期的な発想から生まれた椅子。マリオ・ベリーニが工場で何気なく描いたラインを金属工がすぐに溶接して立体化し、それにレザーを切り貼りして即興で作ったものがベースになっている。
¥239,800~(カッシーナ/カッシーナ・イクスシー青山本店)
●B&B Italia/B&B イタリア
◆Up(アップ)
1969年/Gaetano Pesce(ガエターノ・ペッシェ)
強いメッセージ性で知られる、ペッシェが1969年に手がけた作品。鉄球と鎖に繫がれた囚人のようなボール状のオットマン付
きのアームチェアは、女性たちが社会的に抑圧されていることを表している。
¥1,223,200(B&B イタリア/B&B イタリア トウキョウ)
●arflex/アルフレックス
◆Marenco(マレンコ)
1970年/Mario Marenco(マリオ・マレンコ)
マリオ・マレンコが一瞬のうちに描いたスケッチから生まれたという、クッションを繫いだようなシンプルな造形のソファ。カバーを交換できる現在の仕様は、アルフレックスジャパンの発案によるもの。
¥332,200~(アルフレックス/アルフレックスジャパン)
●zanotta/ザノッタ
◆Sacco(マレンコ)
1968年/Gatti, Paolini, Teodoro(ガッティ、パオリーニ、テオドロ)
イタリア語で「袋」を意味する元祖ビーンバッグチェア。3人の若いデザイナーがポリスチレンの詰まったビニール袋を持って創業者アウレリオ・ザノッタを訪ねたところ、彼はすぐに可能性を見抜き、30分後にはプロトタイプを制作したという。
¥95,700(ザノッタ/ヤマギワ)
◆Quaderna(クアデルナ)
1969年/Superstudio(スーパースタジオ)
反デザインを掲げた運動であるラディカルデザインのグループ、アドルフォ・ナタリーニを中心としたスーパースタジオの作品。3㎝四方のグリッドを描いたラミネートで覆われたテーブル内部は、ハニカム構造になっている。
¥95,700(ザノッタ/ヤマギワ)
●Kartell/カルテル
◆Componibili(コンポニビリ)
1967年/Anna Castelli Ferrieri(アンナ・カステッリ・フェリエーリ)
夫のジュリオとともにカルテルを創業したデザイナー、アンナ・カステッリ・フェリエーリによる収納家具の名作。直径32㎝のシリンダー型のモジュラーを組み合わせ、2~4段で構成されるシリーズを展開。
¥27,800(カルテル/トーヨーキッチンスタイル)
●FLOS/フロス
◆Arco(アルコ)
1962年/Achille & Pier Giacomo Castiglioni(アッキーレ&ピエル・
ジャコモ・カスティリオーニ)
カスティリオーニ兄弟が街灯から着想を得て生み出したフロアランプ。大理石のベースから大きな弧を描くアーチは、その下を人が通ることができるよう計算されたサイズで、離れた場所でペンダントライトとしての機能も果たす。
¥370,700(フロス/フロス ジャパン)
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