私のイタリア原風景
by 写真家・安彦幸枝さん
断崖絶壁の上に佇む村 エリチェ

歴史の表舞台に登場する古代遺跡や世界遺産もいいけれど、数度目なら各地の村や町を巡って人びとの素顔に触れてみたい。現地ゆかりのクリエイターを指南役に迎え、それぞれの記憶に残るイタリアの風景を聞いた。
二人目は写真家の安彦幸枝さん。

text=TRANSIT



海と山、どちらも充実の南イタリア。


シチリアを周遊しているときに立ち寄ったエリチェは、標高751mの断崖絶壁の上に佇む小さな村。驚いたのは、聖母マリア像が村を見守る風景が、実家に昔から飾ってあった写真とまったく同じだったこと。偶然そこを訪れたことに縁を感じました。シチリア産のフレッシュなアーモンドから作られる修道院菓子もお気に入りです。

海も山も好きなのですが、世界遺産になっているマテーラも印象的でした。グラヴィーナ渓谷の岩肌を削って作られた数千にも及ぶ洞窟住群や巨大な石塊をくり抜いた教会があり、渓谷とのコントラストは圧巻。伝統的な製法で作られる、大きなマテーラパンも必食です。

サルデーニャ島の山奥にある壁画の村、オルゴーゾロはほかとは違う趣でした。地域の文化や政治的なメッセージなど、さまざまなテーマで描かれた壁画「ムラーレス」はわざわざ見に行く価値ありですよ。


Erice/エリチェ

中世の面影が残る天空の村。村へ向かうケーブルカーから望むシチリアの空と海は絶景。
Access | パレルモから車またはバスで約2時間。トラーパニからはバスとロープウェイを乗り継いで約30分。カターニャからは車で約4時間。
20231013安彦エリチェ2−1.jpg
©︎Sachie Abiko
20231013安彦エリチェ2.jpg
©︎Sachie Abiko


Matera/マテーラ

イスラーム勢力の迫害を逃れ、キリスト教の修道士たちが築いた洞窟住居群「サッシ」はまさに奇景。
Access | バーリ空港からバスで約1時間15分。バーリ中央駅からは、電車で約1時間30分。ナポリからはバスで約3時間。ローマからは直行の長距離バスで約5時間30分。
20231102_Matera_Abiko.jpg
©︎Sachie Abiko


Orgosolo/オルゴーゾロ

山深い村は生活に困窮する人びとが 絶えず、ムラーレスは窮状を訴えるために描かれ始めた。
Access | ローマ空港からカリアリ空港まで飛行機で約1時間10分。カリアリから車で約2時間20分。チヴィタヴェッキアからは船でオルビアまで約7時間。到着後、車で約2時間。
20231013安彦オルゴーゾロ.jpg
©︎Sachie Abiko

PROFILE
安彦幸枝(あびこ・さちえ)●写真家泊昭雄氏に師事した後に独立。旅と食、猫を得意とし、書籍や雑誌で幅広く活動中。著書に猫の日々を撮りつづけた『庭猫スンスンと家猫くまの日日』(小学館)、『どこへ行っても犬と猫』(KADOKAWA)ほか。

TRANSIT最新号『いつだってイタリアが好き!』では、他のクリエイターの方々のゆかりの地もたくさん掲載しています。本誌もぜひチェックしてみてください!




Recommend

See Also

20231013アルタムーラ道.jpg

絶品パンに新鮮な魚料理珠玉のグルメを味わう南イタリアの小さな村巡り

20231004_T61_pasta_20.jpg

団子形、蕎麦粉、クレープ状......その数500種類以上!イタリ...

ItarianComic20231020.jpg

イタリア・コミックの魅力を語るトークイベント開催@青山ブックセンタ...

私のイタリア原風景by 写真家・在本彌生さん映画『イル ポスティー...