#Travelog
コルカタで見たインドの素顔
東インド・バングラデシュ紀行

*2024年3月25日〜4月14日の間、TRANSIT STOREで、TRANSIT59号 東インド・バングラデシュ特集やBENGAL Tシャツがお得になる「東インド・バングラデシュ月間」を開催!ウェブサイトでは、59号制作時期に編集部が綴ったトラベログを掲載します。


TRANSIT編集部の小さな旅の記録を、徒然なるままに写真と言葉で綴った「Travelog」。
旅の途中でノートの隅に走り書きした電車の時刻、街角で耳にした音楽、コーヒースタンドで済ませた朝食、現地の人と交わしたいくつかの言葉......
そんな他愛もない旅の断片たちを集めた。

TRANSIT59号『東インド・バングラデシュ』の取材企画「ベンガルという名のインドに呼ばれて」より、誌面には収録できなかった旅の裏話などをお届け。
20230421_kolkata00.jpeg 第1回は取材のスタート地点でもあるコルカタ編。
いつまでも色褪せない旅人たちのバイブル『深夜特急』(沢木耕太郎・著)の言葉も交えながら旅を振り返ります。

【ROUTE】東インド・コルカタ

photography & text=KEIKO SATO(TRANSIT)



カルカッタ。どのようなところかはよく知らないが、書物や映像ではどことなく恐ろしげのある街として描かれている。だが、それも存外悪くないかもしれない。(中略)海の向こうのカルカッタには、香港とはまったく違った種類の臭いがたちこめていそうな気がする。カルカッタ、そうだ、悪くない......。  --深夜特急2 マレー半島・シンガポール

著者で旅人の沢木耕太郎さんが、シンガポールの地でカルカッタ行きを決心するシーン。2001年、ベンガル語の呼称である「コルカタ」が正式名称となりましたが、地元ではいまだに「カルカッタ」の名に愛着がある人も多いそう。コルカタは日本からの直行便がなく、デリーやバラナシ、ムンバイや人気上昇中の南インドに比べると、マイナーな旅先かもしれません。

しかしインド第3の都市のエネルギーはすさまじく、通りを一本曲がるまで何が起こるかわかりません。そして世界的に有名な観光地がない分、コルカタにはローカルな街並みや人びとの暮らしがいたるところに残っているのです。


外から見える人びとの暮らし。


コルカタに着いたのは深夜だったので、初日は空港近くのホテルを取りました。翌朝、部屋のカーテンを開けてびっくり。次々とやってくる乗り物や犬や牛も含む通行人の多彩さ、またそれぞれの乗り物の装飾や積載している荷物の雑多さに夢中になり、窓の外に釘付けです。もう一方の窓からは、洗濯物を干す人や料理をする人、鉢植えに水をやる人など、さまざまな生活の様子が丸見えでした。

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初めて目にしたインドの風景。バスの前を平然と犬が歩いています。

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ホテルの窓から見えた風景。屋上では洗濯物を干す人も。

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窓からお隣を覗き見。ごはんの準備をしているのが見えました。

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通りに面した店で肉をさばく人。


とにかく食べるベンガル人。


午後4時頃に街へ繰り出すと、どの屋台も大賑わい。中途半端な時間なのに、割としっかりとした食事をしているようです。コルカタの屋台は朝昼晩問わず大賑わい。朝は統治時代の面影を感じさせるトーストなどのパンや、プーリー、サモサといったインドらしいスナックとチャイ、昼はもちろんカレー、午後4時に街で見かけたのもカレー、夕方にもサモサとチャイ、夜もカレー......といった具合に、ベンガル人は1日中何か(おもにカレー?)を食べているようでした。

そして一食を食べ終える時間が異常に早い。私が食事をしている間、隣の席はいつも2〜3組の客が回転していました。食べることに執着しながら、食事の時間をゆったり楽しむという概念はあまりもたないようです。

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道端で焼いているトースト50ルピー。日本円でおよそ82円(2023年4月現在)。バターを塗り、ザラメ砂糖をまぶしていただきます。

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揚げパンのプーリーと、黄色いものは甘菓子のジャレビー。砂糖を固めたかりんとうのようなお菓子。

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平日の夕方4時頃の食事風景。みなさんどんな属性なのでしょうか。

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道端で煮込まれていたジャガイモとチキンカレー。

ベンガル料理の基本は米と魚。とくにコイやニシン科の魚・イリッシュのカレーは絶品で、料理にマスタードを多用するのも特徴です。そしてひとたびターリー(カレーに豆のスープや揚げ物などの副菜がついた定食)を頼めば、皿一面に広がる米の量に驚愕。ごはんはどのお店も一人前で軽く1合分くらいはあった気がします。

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カルカッタ大学裏手の〈Swadhin Bharat Hindu Hotel〉。淡水魚の一種と思われる白身魚のカレー。ショウガが効いています。

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コルカタの食堂ではカレー+この3点セットが定番。バスマティライスにジャガイモの細切り揚げ、ダール(豆のスープ)がつきます。生タマネギと青唐辛子もほぼ必ず付随。選ぶカレーにもよりますが、セットで250ルピー前後でした。

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今回のコルカタNo.1レストラン〈S.N.Shaw & B.P.Shaw〉。こぶし大のチキンが2つも入ったカレーセットはなんと120ルピー。1食190円ほどです。カレー皿の下には大量の白飯が。

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こちらも地元で大人気の食堂〈Hotel Sidheshwari Ashram〉。魚の女王といわれるイリッシュのマスタードカレーは絶品でした。これで250ルピー。


あらゆる物体と想念が渦巻く交差点。


カルカッタという街はほんのワン・ブロックを歩いただけで、人が一生かかっても遭遇できないような凄まじい光景にぶち当たり、一生かかっても考え切れないような激しく複雑な想念が湧き起こってくる。なんという刺激的な街なのだろう。いったい自分はどのくらいこの街にいたら満足するのだろう......。  --深夜特急3 インド・ネパール

初めてインドの地に降り立ち、コルカタの街を歩きながら沢木さんの脳裏に浮かんでいた言葉。まさにコルカタという街を象徴するような一節です。とくに多種多様な物体が行き交うコルカタの交差点はすさまじく、バス、タクシー、バイク、自転車、リキシャ(人力車)、オートリキシャ、自転車、荷車、徒歩など、各々の交通手段で通りを横断しようとします。クラクションの連打も最高潮に達し、そこには見たこともないエネルギーが渦巻いているかのよう。コルカタの雑踏はインド一すさまじいとの呼び声もあるほどで、この国の熱量を全身で浴びた気分になりました。

ろくに停車しないバスに押し込まれていく乗客。足が悪い人は乗れそうにありません。

ムスリム街の交差点にて、昼の礼拝時間を知らせるアザーンとクラクションの共鳴。音量最大で現地と同等くらいのデシベルになります。

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ユダヤ教のシナゴークから見えるキリスト教のカトリック教会。カーリー神と思われる看板の下には大渋滞。この混沌もコルカタらしい。


解釈が不用なインド。


コルカタのランドマークのひとつ、ヴィクトリア・メモリアルを目指し歩いていると、目の前に突然謎の大草原が出現。先ほどまで人口密度2万2000人/㎢の世界にいたのに、いきなりモンゴルの原っぱに投げ出されたかのような荒涼具合に困惑。まったく意味がわからないまま、それでもフリースペースのようなので足を踏み入れると、そこにはモンゴルの羊飼いならぬコルカタの山羊使いが大量の山羊を従え、野放しの馬が高層ビルをバックに草を喰み、軍隊がきびきびとした足取りで草原を横切り、少年たちがクリケットに興じる光景が広がり、もはや情報処理が不可能な状態に。「このインドでは解釈というものがまったく不用なのかもしれない」という沢木さんの言葉を思い出します。

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突然の大草原と高層ビルと羊。

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こちらには目もくれず草を喰む馬。


大都市の片隅に残る生活の匂い。


カルカッタは、特に何があるという街ではなかったが、いくら歩いても飽きそうになかった。チョーリンギー通りのインド博物館へ行き、ジャイナ教の寺院を見学し、詩聖タゴールの生家であるタゴール・ハウスでも訪れれば、名所巡りの半分は終わってしまう。確かに何があるという街ではない。しかし、カルカッタには、いま生きている人間に関わるものならすべてあった。  --深夜特急3 インド・ネパール

その言葉通り、コルカタにはとくに目玉の観光名所があるというわけではありませんが、だからこそ一つ角を曲がるごとに、ネットの世界では拾うことのできない予想外の光景に出くわします。そして街の隅々には、人びとのありとあらゆる生活が今でも息づいているのです。それらを見て歩くことは、この国の素顔そのものをのぞくことに近いのかもしれません。

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早朝から路上に集まり、新聞を読んだり談笑したり。

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店先のミシンが目印のテーラー。

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チャイおじさんの周りに集まる人びと。

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左/木工道具のお店兼工房。 右/生搾りジュースの店先にあったニンジンのアート。

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左/街中の水場では人びとが体を洗ったり洗濯をしたりしています。 右/インドではお馴染みのコブ牛。

ハウラー橋のたもとにあるフラワーマーケット。混沌はここでも。

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朝日に照らされるフーグリー河と沐浴する人びと。彼らにとっては何の変哲もない日常の一コマ。

そして何より、ベンガル人は人懐っこくてとても親切。電車の切符を買う煩雑な手つづきを手伝ってくれたり、迷っていることを察して道案内をしてくれたり、噂に聞くインドの人びととはちょっぴり違う印象です。

そんなベンガルの素顔に触れる旅。次回はダージリン編をお届けします。




TRANSIT本誌では、この記事で紹介したコルカタの情報のみならず、ダイナミックかつ神秘的な自然や文化、混沌とした街や社会問題など、まだ見ぬベンガルを知ることのできる企画が満載です。

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INFORMATION

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