海の向こうのローカル風土記 vol.11
シンガポールのラクサ
by〈OVERSEAS〉

私たちが日常のなかで何気なく口にし、あるいは背伸びして食卓に取り入れる海外の食品たち。海の向こうでは、唯一無二のおいしさを求めて生産者たちが愛情を注ぎ作っている。
連載第11回は、スパイスとココナッツ香るシンガポールのソウルフード、ラクサをピックアップ。

illustration= HITOSHI KUROKI
text= ALICE KAZAMA



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面積は東京23区程度の小国でありながら、世界的ビジネスの中心地のひとつとしてアジアを牽引する。中国系、マレー系、インド系などさまざまな民族、宗教が混在する多民族社会。したがってその食文化も多様化した。


文化交流から生まれた奇跡のテイスト。


シンガポールは"フードパラダイス"として知られている。世界中からユニークな食体験を求めて人がやってくる場所だからだ。ローカルが日常的に食事をする屋台村のようなホーカーセンターは、バラエティ豊かなストリートフードが安価で楽しめると観光客で賑わう。ラクサ、チキンライス、チリクラブといった代表的なシンガポール料理はもちろん、中華料理、インド料理、マレー料理など多様な食に出合える。ホーカーセンターは2020年にユネスコ無形文化遺産にも登録され、なんとミシュランスターを付与される屋台も出てきた。「シンガポール料理はたんなるストリートフードではなく、私たちに根づく大事なカルチャーです」とシンガポールの大手食品会社、プリマテイストのゼネラル・マネージャーを務めるエリック氏。大のラクサ好きの彼は、小学校の食堂で食べるラクサがおいしくて1日3回食べる日もあった、なんて思い出話もしてくれた。

ラクサとは魚介、レモングラスや唐辛子などのスパイス、ココナッツミルクをじっくり煮込んだ濃厚スープに麺をからめて食べるエスニックなラーメン。15世紀以降マレー半島に移住した中国人と現地の女性が結婚して生まれた子孫のことで、男性をババ、女性をニョニャというが、家庭で作る中国と東南アジアを融合させたニョニャ料理のひとつがラクサだった。ニョニャ料理は手の込んだものが多く、各地のあらゆるスパイスやハーブを多用するため風味に奥深さが生まれる。が、その半面、一から作るのはなかなか大変。多くのスパイスを正しく選び、正確な方法で粉砕し、正確な時間で調理しなければならない。本格的なラクサのスープを作るなら少なくとも2~3時間かかる。だから地元の人びともラクサを食べるときはホーカーセンターかレストランか、またはプリマテイストのようなインスタント麺を選ぶ。「プリマテイストラクサラーメン」はニョニャのおいしいラクサをそのままの原料、そのままの製法で再現しているから、自宅で簡単に馴染みの味が楽しめると国内でもベストセラーの商品だ。

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シンガポールの遺産を袋に詰めて。


プリマテイストの創業者プリムス・チェン氏は自分が大好きな料理があと数世代で消えてしまわないように、と伝統的なシンガポール料理を扱う食品会社を1998年に立ち上げた。

「"テイスト"が命」

これはプリムス氏がいつも使う言葉だ。食材はオーセンティックにこだわり、代替品は一切許さない。彼は今でも商品開発時に何度も行われる試食会にすべて参加する。シンガポールの遺産=食文化を保存することがミッションだと考えている。

さて、こんなふうに海外の食の話をしていると、今すぐにでも現地に飛んで、思いっきりローカルフードを頰張りたいという欲望に駆られることが 少なくないと思う。そんなときこそ「プリマテイストラクサラーメン」がおすすめだ。ほんの数分でシンガポールのスパイシーな香りに包まれ、ホーカーセンターの喧騒までも感じられる。

OVS_T63_3.jpg 今回お話を聞いた人 : エリック・シム氏
プリマテイスト社に12年勤続するゼネラル・マネージャーで、海外マーケット全般を担当する敏腕。幼い頃からラクサが大好き。足繁く通うホーカーセンターはオールドエアポートロード。


●THE LOCAL TIPS


たった7分で本格ラクサのできあがり


500mlの水を入れた鍋に「プリマテイスト ラクサラーメン」のラクサペーストとラクサプレミックス(ココナッツミルクパウダー)を加えよく混ぜる。沸騰したら麺を入れて弱火に。約6分後に油揚げ、モヤシ、ゆで卵、調理済みのエビや貝などお好みの魚介か鶏肉を加えさらに約1分茹でる。器に移して完成。「日本なら温泉卵もいいですね」とエリック氏。海鮮の旨みがスープの中に凝縮されているため、もし具材が足りなくてもそのままで満足感たっぷり。〆にご飯も◎。
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INFORMATION

プリマテイスト ラクサラーメン

シンガポールが誇るソウルフード、ラクサのインスタント袋 麺。ココナッツミルクとエビの旨みが効いたピリ辛濃厚スープに、もちもちの太麺がしっかり絡む。食べ応え抜群。

問い合わせ:オーバーシーズ
0120-522-582
https://overseas-inc.jp/ OVS_T63_4.jpg
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世界のおいしいものを集める〈OVERSEAS〉の生産者を訪ねる旅。連載記事はこちらから。

連載「海の向こうのローカル風土記」

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