台湾映画の巨匠たちがつくった作品が一挙に観られる「台湾巨匠傑作選2024」が、8月30日まで新宿K's cinemaで開催中です。
第8回目となる今回の上映では、「台湾ニューシネマ」を担った6人の映画監督たちの20作品を観ることができます。
1980〜90年代にかけてつくられた自由な気風の「台湾ニューシネマ」。従来の商業映画とは一線を画し、社会を深く掘り下げた視点や芸術性の高さが特徴で、作品からは台湾の市井の人びとの日常や社会問題を垣間見ることができます。80年、90年代の当時も大きなムーブメントを生みましたが、21世紀の現在も台湾ニューシネマを牽引した映画監督たちの作品には世界中に多くのファンがいます。
今回の上映で注目なのが、ワン・トン(王童)監督。台湾ニューシネマの中心人物のひとりですが、彼の作品が日本で公開されたのは、4年前に行われた「台湾巨匠傑作選2020」での『バナナパラダイス』の上映が初のこと。今年はその『バナナパラダイス』に加えて、日本初公開の『村と爆弾』『無言の丘』を含む3作が一挙に上映されます。この3つの映画は「幻の台湾近代史三部作」とも呼ばれる貴重な作品でもあります。
PROFILE
ワン・トン(王童)● 1942年、中国安徽省生まれ。国立台湾芸術専科学校を卒業。美術スタッフとして中央電影でキン・フー監督の『残酷ドラゴン 血斗竜門の宿』(1967)、『俠女』(1970)等に参加する。1981年『仮如我是真的』(英題『If I Were for real』)で監督デビューし、同作で第18回金馬奨最優秀作品賞、最優秀主演男優賞、最優秀改編脚本賞を獲得。自身の監督作品のほか、100をこえる作品で美術の指導にあたっている。
『村と爆弾』(デジタルリマスター版)
ワン・トン監督/1987年/台湾/98分
太平洋戦争中、日本統治下の台湾の人びとの過酷な運命の物語。農村で暮らす小作人のアファとコウヅエの兄弟は出征を逃れて貧しく家族とともに暮らしていた。空襲を受け、敵機が畑に残したのは一発の不発弾。不条理な状況に置かれた人びとの強かに生きる様子や戦争の悲哀を、ワン・トン監督独自のユーモアとともにテンポよく描く。
© 2015 Taiwan Film and Audiovisual Institute. All rights reserved.
『無言の丘』(デジタルリマスター版)
ワン・トン監督/1992年/台湾/175分
皇民化政策による不条理な生活をリアルに描いた作品。 チュウとウェイ、ふたりの小作人兄弟を中心に、鉱山で働く人びとや娼館の人、日本人の親を持つ身寄りのない少年など様々な境遇の人物が登場し、同じ場所に生きる彼らの心が映し出される。
© 2015 Taiwan Film and Audiovisual Institute. All rights reserved.
『バナナパラダイス』(デジタルリマスター版)
ワン・トン監督/1989年/台湾/148分
日本人の知らない戦後の台湾の物語。 第二次世界大戦後、国共内戦中の国民党軍に潜入した青年メンシュアンとダーションが中国華北から南国台湾へ渡る。戦後台湾で数奇な運命を辿る男の半生をユーモアたっぷりの奇想天外な展開で描いた作品。
© 2015 Taiwan Film and Audiovisual Institute. All rights reserved.
これら3つの作品の舞台は、日本の大正、昭和にあたる時代、そして現在の台湾。日本統治時代から現在までを台湾の人びとがどんな思いで、どのように生きてきたのかを知ることができる作品です。
期間中は、ワン・トン監督の作品だけでなく、ワン・トン監督がプロデュースした作品『熱帯魚』も観ることができます。 また、台湾ニューシネマを代表するホウ・シャオシェン監督、エドワード・ヤン監督をはじめとする作品が毎日上映されます。世界的にも評価が高く、台湾の今昔がわかる作品を劇場で観られる貴重な機会です。
『風が踊る』(デジタルリマスター版)
ホウ・シャオシェン監督/1981年/92分/台湾
台湾ニューシネマを世界に知らしめたと言われる名匠ホウ・シャオエン監督の第2作目。 伝統的な家族間や結婚観と、自由恋愛の間で揺れ動く自立した女性の心理を軽やかに描く。
©1982 Kam Sai (H.K.) Company © 2018 Taiwan Film Institute. All rights reserved.
『少年』(デジタルリマスター版)
チェン・クンホウ監督/1983年/94分/台湾
1960年代の台湾・淡水を舞台にした作品。シウインは息子アジャのために歳の離れた男性の元に嫁ぐ。アジャに2人の弟ができるが、弟はアジャの不注意で事故に遭い......。少年アジャの成長を描いた名作。
©2015 Taiwan Film and Audiovisual Institute. All rights reserved.
『愛情萬歳』
ツァイ・ミンリャン監督/1994年/台湾/117分
現代の台北を舞台に、孤独な男女3人の生き方を、冷徹なカメラワーク、極端に少ない台詞、一切の音楽の助けを借りない俳優たちの陰影豊かで繊細な演技など、抑制された演出でつづった人間ドラマ。
©2015 Taiwan Film and Audiovisual Institute. All rights reserved.
『熱帯魚』(デジタルリストア版)
チェン・ユーシュン監督/1995年/108分/台湾
*ワン・トン監督プロデュース作品
90年代の台北。空想好きの中学生のツーチャンはひょんなことから誘拐事件に巻き込まれる。
© 2011 Taiwan Film and Audiovisual Institute. All rights reserved.
『ヤンヤン夏の想い出』
エドワード・ヤン監督/2000年/173分/台湾・日本
祖母と両親と姉と、台北で暮らす8歳の少年ヤンヤン。祖母の病気を皮切りに、家出する母、昔の恋人を追う父、恋に煩う姉......。そんな家族の姿をヤンヤンは冷静に見つめる。2007年早世したヤン監督の遺作。
©1+2 Seisaku Iinkai
台湾のさまざまな年代と人びとの姿を知ることのできる、全20作のラインナップ。日本上映が限られている貴重な台湾の映画作品が観られるこの機会に、ぜひ新宿K's cinemaへ足を運んでみてください。
INFORMATION
君はワン・トン(王童)を観たか!
『台湾巨匠傑作選2024』
台湾映画の傑物ワン・トン監督と台湾ニューシネマの監督たち
日時|2024年7月20日(土)〜8月30日(金)
場所|
新宿K's cinema
住所|
東京都新宿区新宿3-35-13 3F
上映スケジュール|
https://www.ks-cinema.com/movie/taiwan2024/
公式サイト|
https://taiwan-kyosho.com/
提供・配給|オリオフィルムズ、竹書房 配給協力|トラヴィス 宣伝|大福
共催|
国家電影及視聴文化中心 特別協力|
台湾観光庁
後援|
台北駐日経済文化代表処台湾文化センター