国や宗教にかかわらず、世界中で聖地は山につくられてきた。俗世の煩悩から離れるため、少しでも天の神に近づくため、山の神を崇めるため。技術やインフラに乏しい時代、それでも人びとは山上を目指した。
ここでは、そんな祈りの強さが伝わってくる5つの過酷な山岳聖地を紹介しよう。
●スリー・パーダの足跡(スリランカ)
©Somyot Sutprattanatawin
一つの足跡をみんなで共有。
4つの宗教の聖地である通称アダムス・ピーク。標高2238mの山頂の寺院に残る足跡は、仏教徒にはブッダ、ヒンドゥー教徒にはシヴァ神、キリスト教徒には聖トマス、イスラームにはアダムそれぞれがこの地に降臨したときの足跡として崇められている。3月の巡礼シーズンは多くの人が登頂し、民族や宗教の垣根をこえた信者でにぎわう。
●懸空寺 (中国)
©Jeremy Reding
古代の職人技が生きた名作。
山西省渾源県にある恒山の主峰・天峰嶺の断崖絶壁にへばりつくように建つ寺院。5世紀末の北魏後期の創建といわれ、仏教、道教、儒教が一体化した今では中国唯一の例。もっとも高い地上90mの場所に位置する三教殿には、それぞれの開祖である釈迦、老子、孔子の像が祀られている。建物はほぼ1500年前の建設当時の姿を維持。
●シャトルンジャヤ (インド)
©Andrea Kirkby
山上に広がる一大宗教都市。
西インド、グジャラートのシャトルンジャヤ山上に位置する山岳寺院。ジャイナ教5大聖地の一つで、頂上付近には900を超える無数の伽藍が一円に広がる。ジャイナ教は山への巡礼を功徳とするが、異教徒からの破壊を逃れる目的も山岳聖地形成の要因の一つになったとみられる。殺生を禁じるため、山には皮革製品の持ち込みも不可。
●モンセラート 聖マリア修道院(スペイン)
©gyrofrog
祈りと芸術が生まれる聖地。
バルセロナ北西のモンセラート山腹に位置する修道院。標高700m地点にあり、聖域を取り囲むようにそびえ立つ巨岩・奇岩は圧巻の見応え。修道院は11世紀に創建され、奥の大聖堂には修道院建立のきっかけとなった「黒いマリア像」が祀られている。自然に答えを求めた建築家のアントニ・ガウディも、思索のためこの地へ何度も通った。
●メテオラの修道院群 (ギリシア)
©Eileen Lavery
俗世から隔絶された修行の場。
ギリシア北西部のテッサリア地方にある、奇岩の上に立つギリシア正教の修道院群。標高20〜600mの奇岩が密集し、それぞれの岩上に計24の修道院が残る。険しい奇岩群の地形は、俗世間とのかかわりを断って修行する格好の場であったとみられ、14世紀頃から次第に修道院が創建された。現在も6カ所が修道院として機能している。
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