モデル、コラージュアーティストとして活躍する花梨さん。
世界各地の風景や文化がアートワークのインスピレーションにもなるという旅好きの彼女が目指したのは、あこがれの地・モロッコ。旅のパートナーは、ロンドンに暮らす弟。
姉弟ふたりの、サハラ砂漠への3日間の旅がはじまった。

text & photography=KARIN（étrenne）

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モロッコに着いた。2020年に計画していたモロッコ旅行が新型コロナウイルスの影響で行けなくなってしまったため、モロッコにやっと来れた!!という感動が全身を駆け巡る。今回、弟が住んでいるロンドンに少しだけ滞在してからモロッコに向かったので、ロンドンの暗い天気から一転、雲ひとつない青空と、赤茶の建物が突然目に飛び込んでくる。初めての姉弟旅。モロッコは両親が新婚旅行に来た場所で、弟と二人でその土地を旅するというのは何だか不思議な気分だ。今回、旅の目的は2つ。現地の砂漠ツアーとモロッコ産の工芸品をゲットすること。



マラケシュの街は、マラケシュ・ナメラ空港から10分程。今日泊まるリヤド（伝統的な住居を改装した宿）の人が空港に迎えに来てくれていた。 リヤドに入ると白い壁と床は赤茶のかわいいタイルが敷き詰められている。リヤド特有の中庭に通され、かわいいモロッコの民族衣装を纏ったホテルの方がミントティーを淹れてくれる。



ツアーのバスがマラケシュを出発した。2年越しの念願の砂漠ツアーが始まる。広大な乾燥した大地の中、一本道が山に向かってつづいていく。何もない、こんなにも広い大地がつづいていくさまを見たのは生まれて初めてだ。学生時代の歴史の先生の言葉を思い出す。アフリカの大地に足をつけると、エネルギーが体の中で沸き起こってくるんだ、とよくしうれそうに話していたっけ......。その頃からこの地に憧れていたのかもしれない。

街も山も大地も同じ色を纏っている。オレンジがかった土色と珊瑚色がミックスされた、青空によく似合うこの色は、異国の地にやって来たのだと実感するには十分だ。視線を街にやれば、建物一つひとつの色や造りに、人びとの生活が見えてくる。街の人びとが着ているジュラバのインディゴブルーや萌えるような赤が街によく映え、ロバの手綱までもカラフル。みんながしっかりと色を纏っている光景に、思わず笑みがこぼれた。

乾燥した広大なオート・アトラス山脈の中につくられた一本道を進むと、やがて車窓には無造作に路上に置かれたお土産を売っている人たちがポツリポツリと現れた。犬やロバとともに歩いている人びとの横を通り過ぎていく。砂漠までの道のりでいろんな街に立ち寄ったが、野良の犬や猫がたくさんいて、街の人びとと共存している。当たり前に動物たちが人と暮らしている光景は、なんだかほっとする。



かわいいタイルが敷き詰められた、〈Tizi Ait Barka〉という小さなカフェにバスが停まる。テラスからは尖った赤い岩が大胆に迫り出した国立公園が見えた。ミントティーを飲み、ひと息ついて出発。ミントティーがこの旅の欠かせないエッセンスとなっているのを感じていく。



1日目のツアーの目玉、アイット=ベン=ハドゥ集落に到着した。日干しレンガの要塞村で、乾燥地帯特有の砂、土、ワラを使った建物は、17世紀に先住民のベルベル人によって造られたという。ベルベル人のガイドが、この城塞化した集落は「カスバ」といい、王様とたくさんの王女が住んでいたと説明してくれた。

入り組んだ道を進むといたるところに太陽光パネルが設置してあった。このパネルで街の電気をほぼ賄っているそうで、現代のテクノロジーとの融合バランスが逆にSFのような世界観を醸し出していると感じ、自分が一体今どこにいるのか、どの時代にいるのか分からなくなる。アフリカの大地のエネルギーを全身で感じ、なんだか心がゾワゾワとする。

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