1989年、6カ国6名の冒険家たちが南極大陸を犬ぞりで横断するかつてない冒険がありました。氷点下50℃の地吹雪のなか、約6,040kmの道のりをゆく約7カ月間の旅。その冒険をいま改めて振り返り、当時のメッセージを次世代へ繋げるイベント「THINK SOUTH FOR THE NEXT 2022」が2022年12月に開催されました。主催は、当時の南極の冒険で、テントやウェアといったギアを提供していた〈THE NORTH FACE〉を展開する株式会社ゴールドウインと株式会社DACホールディングス。

地球上で唯一国境をもたない南極大陸で、犬ぞりの横断に挑んだ6カ国6名の冒険家たち。彼らが抱いていた「チャレンジスピリット」「平和」「環境」の3つの精神に焦点を絞り、それぞれ異なるフィールドで活動している人たちを招いて、3部構成のトークイベントと1989年の南極旅のドキュメンタリー映画『Trans-Antarctica Expedition』の上映が行われました。

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「環境編」では、環境活動家の露木しいなさんと居住一体型の学びの場・SHIMOKITA COLLEGEの山下莉奈さん、西岡杏珠さん、長峰柏維さんの学生たちが対談。それぞれが向き合う環境問題について語り合いました。


ほかの対談はこちら
>>平和編/石川直樹さん×松村圭一郎
>>チャレンジスピリット編/ドミニク・チェン×村上祐資

photography=MOMOKA OMOTE
design=YUMA TOBISHIMA(ampersands)
illustration=ATSUYA YAMAZAKI
edit&text=MAKI TSUGA(TRANSIT)



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―――まずは登壇者の方々、自己紹介をお願いします。

露木しいな(以下、露木) : こんばんは。大学4年生で環境活動家をしている、露木しいなと申します。今は大学を休学して2年ほど環境活動をしています。具体的な活動としては、全国の小学校から大学まで環境教育に関する講演をしています。過去2年間で200校ほど、沖縄から北海道まで講演をして、約3万人の方にお話をしてきました。

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露木しいな(つゆき・しいな)●環境活動家。2001年横浜生まれ、中華街育ち。高校時代は「Green School Bali」に3年間留学。現在は慶應義塾大学環境情報学部を休学しながら、全国の学校で環境講演中。肌が弱かった妹のために口紅を開発し、Shiina Cosmeticsを立ち上げる。

最初に環境問題に興味をもつきっかけとなったのが、私が高校生のときに通っていたインドネシアのバリ島にあるGreen School Baliでした。世界のグリーンリーダーを育てることを目標とした学校で、建物がすべて竹でできていて、世界で一番エコな学校といわれている場所で、日々環境について勉強をしていました。

ここに3年間留学したときに、初めて環境問題というのは自分たちの日々の生活にかなり密にかかわりがあって、とくに若い世代に影響があると知りました。さらに高校3年のときに国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)に参加する機会があって、その際に環境活動家のグレタ・トゥンベリさんにもお会いしました。2歳年下のグレタさんは、気候変動に対する政策を政府に抗議しようと16歳で学校ストライキ「Fridays for Future」をはじめて、全世界約700万人の同世代に影響を与えていて、本当に行動力があります。

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©SHIINA TSUYUKI

当時、日本でこのような環境活動をしている若者が少なかったので、世界との行動の格差はどういうところからきているのか気になりました。私は情報格差からきていると思いました。当時は、日本の学校の教科書を見ても環境問題は1〜2ページほどしか取り上げられていませんでした。

まず知ってもらうことが行動につながると思い、日本各地で講演をしています。最近、TikTokみたいなショート動画で社会問題を学べるものを1週間で2本出し続けていて、その製作費をクラウドファンディングで500万円集めました。現在はInstagramでも動画を出しているのですが、繋がりのある先生に授業で使ってもらうこともしています。今日はよろしくお願いします。

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©SIINA TSUYUKI

山下莉奈(以下、山下) : 山下莉奈と申します。今大学2年で、SHIMOKITA COLLEGEに2022年4月から住んでいます。現在、気候変動を知ってもらえるように大学以外の学生団体で活動しています。私は露木さんと小学生の頃から知り合いだったことがきっかけで、環境問題に関心をもちました。

私はグレタさんがはじめた「Fridays for Future」を日本で1年ほど活動した後、もっと日本で環境問題を身近に楽しく知ってもらいたいと思い、新しく「A(n)action」という団体に入っています。これは気候変動のタイムリミットを示すクライメートクロックという時計を渋谷の商業施設や文化施設に置く取り組みで、渋谷で遊んでいるときにも何度も目に入るようにと活動しています。よろしくお願いします。

西岡杏珠(以下、西岡) : 西岡杏珠と申します。SHIMOKITA COLLEGEに住んでいて、現在、大学2年生で早稲田大学人間科学部に通っています。人間科学部では環境デザインや組織開発について学んでいます。私は高知の出身で過疎地で育ったこともあって情報格差に関心があり、課外活動として高校生に主体的な進路選択を提供できないかと、東京に出てきてからも高知の過疎地域の高校に行っています。SHIMOKITA COLLEGEでは学校内での学びで下北沢のかかわりをつくることに取り組んでいます。

環境に関してはあまり詳しくないのですが、地元にいると「今年は雪降らないね」「雨がすごく多いね」といった会話をとおして、環境の変化を感じることはありました。ここで(山下)莉奈と出会ってクライメートクロックのことを知って、環境のために実際に活動している人たちのことが見えてきたので、知るのはとても大事だなと思います。今日はいろんな気づきがあればと思います。よろしくお願いします。

長峰柏維(以下、長峰) : 高校2年生の長峰柏維と申します。SHIMOKITA COLLEGEに住んでいます。今回このトークイベントに参加した理由ですが、自分は人と話すのが好きで、そのためには積極的に人と出会う場に行くことが大事だと思い、SHIMOKITA COLLEGE内のイベント登壇者の募集を見て応募しました。たくさん人がいて緊張していますが、よろしくお願いします。

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SHIMOKITA COLLEGE(しもきたかれっじ)●日本初のレジデンシャル・カレッジ。国籍、世代、専門、考え方も異なる仲間が集って暮らし、学ぶ場所。下北沢というまちをキャンパスに見立て、街の人たちとの関わり合いも通して、これからの社会を導いていく次世代を育む場を目指し、2020年に下北線路街に開業。写真左から、SHIMOKITA COLLEGE在住の長峰柏維さん、西岡杏珠さん、山下莉奈さん。

―――対談の前に露木さんに具体的な活動についてお伺いします。バリのGreen Schoolに通っていたと思うのですが、その前に原点みたいなものはあったのでしょうか?

露木 : 遡ると幼稚園での体験が根底にあります。神奈川にある「トトロ幼稚舎」に通っていたのですが、そこは昼食の時間に自分たちで飯盒でご飯を炊いて包丁を持って料理したり、卒業遠足で1日30km歩いたり、常に自然のなかで過ごす幼稚園でした。そのときは環境問題に興味がなかったのですが、自然ってディズニーランドみたいに夢が詰まっていて、食べ物も水も生き物もいて自由に遊びをつくり出せる素敵な空間だなという感覚がずっとありました。

Green Schoolで環境問題を初めて知って、どの問題も人間が起因していると感じて、小さいときに好きだった自然を自分たちで破壊しているという罪悪感で悲しくなり、どうやったら解決できるか教わるなかで、何かできることがあるという感覚を育みました。

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―――2018年、2019年にCOPに参加されて、2019年に大学に入学して、講演を2020年から始められたとのことなのですが、それはCOPに参加して海外の人たちとの意識の違いを感じて環境活動家としてやっていこうと思ったのですか?

露木 : COPに行って一番刺激を受けたのはグレタさんのスピーチと会話したときの本気度です。危機的な感覚を感じたのは彼女がきっかけです。2年間COPに参加して以降は行っていないのですが、それには理由があります。

世界の会議に参加するのは貴重な機会です。「Think Global, Act Local」という言葉は本当にその通りだと思うのですが、私はまだ会議で意見を言える立場ではない。そういう意味でも、母国で自分の強みを最大限に生かしながらできることがあるのならばそちらのほうがいいと思い、日本国内で少しずつ活動しています。

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©SHIINA TSUYUKI

―――環境問題について、海外と日本との温度差を感じることはありますか?

露木 : そうですね。ヨーロッパでは気候変動の話題が当たり前のように取り上げられて幼稚園のときから環境問題について学んで、そこから危機感をもつ。日本だと環境問題という授業がそもそもない。社会科の教科書で数ページ取り上げられる程度です。関心がないのは自分たちのせいというよりは、社会のつくりや教育の格差が根底にあると思います。

講演をしてきた学校では、SDGsという枠でほとんどの学生が学んでいるので、社会問題全般に関心をもって取り組んでいるように感じられました。さらに「探究」という授業が普及していて、自分の関心のあるテーマを深掘っていく。なので自分で団体をつくって活動をしていたり、地域の農家さんと商品開発をしたり、給食の牛乳のストローをほかのものに変えたいといって他校と一緒に行動している方もいます。日本の教育も少しずついい方向に変わってきていると思います。


―――露木さんは妹さんが肌が弱いため体にやさしいコスメの企画開発も携わっていらっしゃるとお聞きしました。これからどのような未来を見据えて活動されていくのかお伺いしたいです。

露木 : 今は環境活動がメインで、一番モヤモヤするのは問題提起で終わってしまうことです。講演をしても、確かに新たな気づきから行動が生まれたら社会がよくなりますが、より問題解決に関わりたいと思っています。なので、今はソーシャルビジネスとして社会問題を解決しながらお金を生み出して社会に還元する流れをつくりたいと思っています。

それをすでに取り組んでいる尊敬する会社もたくさんあるので、そういうところから学びを得て自分でも本格的に取り組もうと思っています。2023年4月に開発した口紅が出る予定です。講演もショート動画も続けます。


―――それでは4つの質問を用意しましたので、登壇者の方々にお話いただきたいと思います。 1つ目。気候変動を自分ごとに感じていますか?

長峰 : 高校の授業に気候変動の話題も入ってくるようになってきましたが、まだ他人事のような感覚かもしれません。深く考えなくてはいけないことはわかっているのですが、実際に行動に移す際の障害が多かったり、情報の格差があります。情報があっても受験があったり親の反対で行動できない人も多いし、問題提起されてその日は気づきがあっても次の日には忘れていたりします。日本のできあがった生活が環境問題を自分事化するのを遠ざけているのかなと思います。

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露木 : そこは結構課題だなと思っています。高校生だと、学校でSDGsや探究の授業が入ってきていると思うのですが、最近の授業に変化はありますか?

長峰 : 僕の場合、中学校では環境に関する授業があったのですが、実は高校ではそういう授業がまったくありません。高校は完全に受験のための授業で、環境問題について知らない人が多いと思います。そういう活動をするのは勉強ができる人だけだという感覚があります。親や先生からは、いい大学に行ってそこからやればいいんじゃないと言われたり、自分事にする年齢が早いんじゃないかと言われます。

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露木 : それって受験国に多い傾向なのかもしれませんね。今、ヨーロッパではEco Anxiety(エコ不安症)という言葉があって、気候変動を自分事化していくと不安症になって何もできなくなってしまう人が増えてきているんです。特定の地域では学校に専門のカウンセリングの先生がいらっしゃいます。日本では環境問題は先延ばし、ヨーロッパでは自分事化した後のことを考えているような状況かもしれません。

山下 : 私は環境問題を自分事に感じています。大きなきっかけとなったのが、まず身近な存在に露木さんという環境活動家がいたことです。それまでは他人事だったのですが、同世代の友だちが行動していることに衝撃を受けて、社会問題を自分事化して行動できる人はかっこいいなと思って、現在は自分でも行動しています。

もう一つのきっかけは、大学受験でした。中高生の授業では気候変動をはじめとした社会問題が取り上げられることはなくて問題があることに気づくことすらなかったのですが、受験生になって大学入試の小論文の勉強をしていたら、その論文のテーマの多くが社会問題だったんです。

1000字で社会問題への自分の意見を述べなさいとか、英語の文章も社会問題で賛成か反対かを問われていたり、そこで初めて自分の意見として考えさせられることがあったのが大きかったです。いろんな問題をニュースで見てそこで受動的に終わらずに、それに対しての意見を能動的に次のステップとして考えるきっかけが増えれば、行動できる人が増えるのではないかと思いました。


―――2つ目の質問です。やりたいこと、できること、できないことの葛藤はありますか? 経済的制約や理想と現実のギャップなど感じていることがあれば教えてください。

西岡 : 自分事化することがやっとできはじめたかなと思います。それはSHIMOKITA COLLEGEで莉奈のような環境について考えている人が身近にいるからだと思います。それまでは地元にいたときも環境を学問や活動としていることも知らなかったし、仕事にはできないと思っていました。大学へ入学して一気に世界が広がりました。

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ただ、ビーガン料理や環境にいい洋服を着たいと思っても経済面で安いほうに惹かれてしまう。そういった葛藤はあります。

逆に、環境のことを意識していなかったけれど、無意識に環境負荷の少ない選択をしていたということもあります。たとえば、食料でも洗剤でも少量より大容量パックを購入したほうがプラスチックを減らせるので環境にいいと聞きました。私は環境によいという意識ではなく、お得だから利用していたけれど、そういうことからも人を環境によい方向に誘導できるのはおもしろいなと思います。

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豆腐の唐揚げ、大豆ミートを使った黒酢の酢豚風、ラザニア、キノコの味噌豆乳ペンネ、チョコブラウニーまで、SHIMOKITA COLLEGEに在籍する久我優衣奈さんが料理を担当。

―――では3つ目の質問です。露木さんもグレタさんという年下の方に影響を受けたとおっしゃっていましたが、逆に親や先生世代との意識の差は感じますか?

露木 : 環境意識の差は感じます。でもそれがいい悪いでは言い切れない。私はなぜ自分が環境問題に取り組んでいるのかと考えたときに、この時代に生まれたからというのも理由の一つだなと思います。Green Schoolが開校してまだ15年ほどで、それ以前はなかった。なかった理由としては、需要がなくて生徒が集まらないという部分もあると思います。この時代に生まれたから、環境問題に取り組みやすかったり、関心をもちやすかったり、情報を取り入れやすかったというのがあります。

大人の世代で環境に取り組んでいない人が世の中で権限をもっていることもあるので、それはもちろん関心をもってほしいのですが、その世代は経済成長などその時代に大切だったことに力を注いできたとも考えられるので、世代間で意識の差があるのは自然なことだとも思います。

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山下 : 世代間の意識の差は感じますね。たとえば、クライメートクロックはクラウドファンディングで集めたお金で時計をつくり、企業の方とお話もします。そこで私たちがクライメートクロックを置きたいと交渉していると、気候変動についてこれまで取り組んだことがない企業も多い。それに対して、どうしたら一緒にやっていけるかと考えて前向きに動くようにしています。意識の差は事実ですが、悲観的でいるわけではありません

長峰 : 世代間の格差はそこまで気にすることじゃないと思います。これから自分たちの世代がやっていくことだと思います。かなりご高齢の方と話していたときに感じたことがあったのですが、もう自分はこれから長く生きないからもう環境問題に関する行動をしなくていいと思っている方もいるからです。環境問題に関心がある人は、これからもずっとその問題と一緒にいる世代が多いと思います。


―――映画『Trans-Antarctica Expedition』の感想もお聞きかせください。

露木 : テントの中で言語の話をしていて、南極に行っても、私たちと同じような会話をするのだなと単純に感じました。あとは自分の今までの人生やこれから成し遂げたいことを掛け合わせて考えることが多くて、このドキュメンタリーはゆっくりストーリーが進んでいくので、自分の今までのことを考えて観ていました。協力し合うことの大切さを感じて、思いやりをもてる人になりたいなと思いました。この国だからこうというより、みんな人間は同じなのだなと感じました。

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―――この南極横断の旅から33年が経ち、現在はこの旅のスタート地点から200マイルまではすでに氷床が溶けて海になってしまっています。そういったことからも気候変動が深刻な状況にあることがわかります。

西岡 : 今はあの道では横断できないというのはびっくりしました。映画のなかで好きな言葉があったのでメモしました。「目的を達成するには国境も関係ない」という言葉です。南極大陸横断のために集まった6カ国の人たちをいろんな国の人たちが応援するというもので、協力は素敵だと思いました。環境というテーマは世界共通のものだから、そのために皆が動けたら国境も何も関係なしに協力できるのではないかと思いました。

山下 : 当時は冷戦もあった時代なのでグッとくるものがありました。30年経って、現代から考えたときに、いろんな社会課題があるなかで世界が協働していけたらいいなと思いました。当時の人にすごい勇気をもらえたし、これから生まれてくる世代のことも考えていければいいなと思いました。

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―――4つ目の質問です。環境問題は深刻なトーンで語られ、制限が多い印象もあります。どんな気候変動アクションが実現されたらワクワクしますか?

山下 : 私がクライメートクロックの活動をはじめるきっかけとなったのは、その質問にも結びついています。以前に所属していた環境活動団体では、経済産業省の前でデモをしたり企業に署名を出したり、堅めなアクションをしていました。道の上でスタンディングやスピーチをしていると、通り過ぎるときに冷たい目で見られたり、「意識高いよね」と言われることがあって、やっている側が楽しくないとつづけられないというモヤモヤを感じていました。

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©picture alliance/aflo

そういうなかで、多くの人を巻き込めるような別のアプローチはないかと、新しい団体を立ち上げました。その団体が、もっと楽しく、かわいく、おもしろくアクションをしていこうというものです。たとえば、クライメートクロックをライブハウスなどに置くことで、アーティストと一緒にイベントをすることもできます。服飾学生と一緒にアップサイクルのファッションショーを開くこともできます。環境活動単体ではなく、音楽やファッションやスポーツといったカルチャーとコラボして接点を増やし、その人たちならではの表現や楽しいと思えるアクションを広めていけたらと思っています。

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露木 : 環境に対してアクションすることで、未来にどれだけ美しい自然を残せるか、というメリットはあると思いますが、直接的にその人にプラスになるようなことはなかなか少ないですよね。

買い物をしてレジ袋を使う場合は料金が加算されるといったように負荷をかけていくことも必要ですが、もっと環境に対して良いアクションをしている人がメリットを感じられる仕組みがあってもよいかもしれません。以前、デンマークに行ったときに、スーパーの横に自動販売機のようなものがあって、ペットボトルを入れるとお金が出てきました。

ゴミってこんな価値があるのかと思って、ゴミ拾いしたくなりました。そういう楽しいかたちでできたら、環境を考える輪が広がっていくと思います。

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©Reuters/aflo


西岡 : 自分がワクワクすることは、散歩やおいしいものを食べることや人と話すことが好きなので、そこと環境問題をかけ合わせられたらいいかもしれません。私は東京に来て2年目なのですが、駅を降りるごとに違う顔があってすごくおもしろいです。道を歩いているときに何があったらワクワクするのでしょうか?

山下 : SNSでシェアしたくなることかなと思います。食べ物とか。

西岡 : こういうことを考えるのが、毎日楽しくなることだと思います。
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―――対話や考えることが重要ですね。ここでイベント参加者からいただいた質問を。たとえばエコバッグを使うなど、自分の生活を変えることでどのように環境問題がいい方向に行くのか想像できないことが多くあります。その意識を変えるためにはどうすればよいでしょうか。

露木 : 人は変えられないというところを理解したうえで、自分がどう変われるか。そしてそれを周りの人が見て変わってくれるケースもあるのですが、「変わってよ」と言って変わってくれる人はなかなかいないです。ワクワクするアクションみたいに、自分が活動している姿をどうやって楽しく届けられるかが重要だと思います。


―――最後に本日のイベントの感想をお願いします。

山下 : 気候変動について最前線で活動されている露木さんとお話できたことは、非常に貴重な経験でした。これからも環境問題について考えつづけていきたいです。世界が模索しながら立ち向かっている問題なので、いろんな人と考え協働しながら頑張っていきたいと思いました。ありがとうございました。

露木: ふだんから全国の学校で講演をしていますが、なかなか学生の方と対話する機会がないので素直な思いを聞けてとてもよかったです。ぜひ私のInstagramも覗いてみてください。社会には目を向けなければいけない問題がたくさんあるので、ぜひ情報源として頼っていただけたらうれしいです。本日はありがとうございました。

transit_thinksouth_product.png Trans Antarctica Parka /NP62238(左)
¥79,200(税込)
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「THINK SOUTH FOR THE NEXT」プロジェクトと連動して発売されたプロダクト。
*在庫状況によっては売り切れの場合があります。ご了承ください。



■PROFILE transit_thinksouth_b_20-min.png 露木しいな(つゆき・しいな)●環境活動家。2001年横浜生まれ、中華街育ち。高校時代は「Green School Bali」に3年間留学。現在は慶應義塾大学環境情報学部を休学しながら、全国の学校で環境講演中。肌が弱かった妹のために口紅を開発し、Shiina Cosmeticsを立ち上げる。(写真中央左)

山下莉奈(やました・りな)●大学2年生。大学ではソーシャルビジネスを学ぶ。渋谷を拠点とし、気候変動のタイムリミットを示す「Climate Clock」を設置する活動を行う。(写真中央右)

長峰柏維(ながみね・はくい)●高校2年生。最近は地形が国や歴史にどのような影響を与えたかに関心がある。(写真左)

西岡杏珠(にしおか・あんじゅ)●早稲田大学人間科学部の大学2年生。人間科学部に通い、教育工学の分野を学ぶ。人の認知や行動について興味をもっている。(写真右)

SHIMOKITA COLLEGE(しもきたかれっじ)●日本初のレジデンシャル・カレッジ。国籍、世代、専門、考え方も異なる仲間が集って暮らし、学ぶ場所。下北沢というまちをキャンパスに見立て、街の人たちとの関わり合いも通して、これからの社会を導いていく次世代を育む場を目指し、2020年に下北線路街に開業。


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